
がんと一言で言っても、胃がんや大腸がん、膵臓がんなど、さまざまな種類があります。また、一部のがんにはかかりやすさに男女差が見られます。
今回は、女性がかかりやすいがんの種類や5年生存率、罹患数などについて詳しく解説します。
部位別がん罹患数と5年生存率(ネット・サバイバル)
参考:厚生労働省「全国がん登録 罹患数・率 報告 2020」
厚生労働省によると、女性の部位別がん罹患数は上図のとおりです。
最も多いのは乳がん91,531人(22.3%)で、大腸がん64,915人(15.8%)、肺がん39,679人(9.7%)、胃がん34,551人(8.4%)が続きます。 2019年度のデータからほぼ変化がありません。
それでは、5年生存率について詳しく見ていきましょう。生存率には、3つの種類があります。
- 実測生存率……がん以外の原因による死亡も含めた生存率
- 相対生存率……がんが原因による死亡のみを計算に含めたときの生存率
- ネット・サバイバル……がんのみが死因となる場合の生存率(推計値)
従来、がんの5年生存率を見るときは相対生存率が主に用いられていました。
相対生存率は理論上100%を超えるケースもあるなど課題があります。そこで、最新の統計においては、純粋に「がんのみが死因となる状況」を仮定して算出する「ネット・サバイバル」と呼ばれる「純生存率」が採用されています。
国立研究開発法人国立がん研究センターの「院内がん登録2014-2015年5年生存率集計」によると、女性における乳がん、大腸がん、肺がん、胃がんのネット・サバイバルは次のとおりです。

女性がかかりやすいがんの種類
それでは、女性がかかりやすい乳がん、大腸がん、肺がん、胃がんについて詳しく見ていきましょう。
乳がん
乳がんは、乳腺の組織にできるがんです。乳管と乳腺小葉から発生する可能性がありますが多くは乳管から発生し、また乳腺以外から発生する腫瘍も存在します。症状は、乳房のしこり、えくぼ、ただれ、左右の乳房の非対称、乳頭からの分泌物などです。
進行すると、乳房の周りにあるリンパ節や肺、骨などに転移する場合があります。
乳がんは、しこりがないか触れて確認することで早期発見が可能なこともあるがんのため、着替えや入浴の際にセルフチェックするとよいでしょう。ただし、しこりの大きさや形などだけで乳がんかどうかはわかりません。また、小さなしこりは手に触れなかったりわかりづらかったりするため、しこりがなかったとしてもマンモグラフィなどの定期検診は欠かさないことが大切です。
大腸がん
大腸がんは、大腸(結腸・直腸)にできるがんです。良性ポリープががん化したものと、粘膜の細胞ががん化したものがあります。大腸の粘膜に発生するがんは、大腸の壁の深くへ侵入し、やがて大腸の外側へと広がります。
早期では自覚症状がほとんどありません。進行すると便に血が混ざったり便の表面に血が付着したりすることがあります。また、慢性的な出血が原因でめまいのような貧血の症状が現れる、腸が腫瘍によって狭くなり便秘や下痢、残便感、お腹の張りなどが生じるなど、症状はさまざまです。
進行した場合は、大腸の壁の中を流れるリンパ液、血液の流れに乗って全身の臓器へ転移します。また、腹腔内に散らばって「腹膜播種」と呼ばれる状態を引き起こすこともあります。
定期的な便潜血検査で早期に発見することが可能なので、定期検診を忘れずに受けるようにしましょう。
肺がん
肺がんは、肺胞の細胞や気管支の細胞ががん化したものです。周りの組織を破壊しながら増殖し、血液やリンパ液によって全身へ運ばれ、遠隔転移を引き起こします。肺がんには大きく分けて、腺がん(=肺腺がん)、扁平上皮がん、大細胞がん、小細胞がんの4種類があり、中でも腺がんは半数以上を占めています。
早期には症状が見られないことが多く、進行すると咳や痰、血液が混ざった痰、胸の痛み、動悸、発熱などが見られます。
定期的なレントゲン検査で早期に発見することが可能なので、定期検診を忘れずに受けるようにしましょう。
胃がん
胃がんは、胃の内側の粘膜の細胞ががん細胞へ変化したものです。胃の外側へ向かって進んでいき、胃の外側に達すると、胃の周りにある大腸や膵臓、肝臓などへと浸み出るように広がっていきます。
早期の段階では自覚症状がほとんどありません。進行すると、胃痛や胃の不快感、違和感、胸焼け、吐き気、食欲不振などが見られることがあります。
胃のバリウム造影検査や内視鏡検査で早期に発見することが可能なので、定期検診を忘れずに受けるようにしましょう。
まとめ
女性がかかりやすいがんは、乳がんや大腸がん、胃がん、肺がんなどです。また、一生のうちにかかるがんは一種類とは限らず、他のがんにかかる可能性もあります。がんを防ぐ方法は確立されていないため、各種検査を定期的に受けて早期発見・早期治療を目指すことが大切です。
また、すでにがんにかかっている場合は、担当医と相談しながら適切な治療を続けましょう。
出典
国立研究開発法人国立がん研究センター「院内がん登録2014-2015年5年生存率集計」
厚生労働省「全国がん登録 罹患数・率 報告 2020」
作成日:2023年4月6日
更新日:2025年4月10日
■医療監修

西 智弘 医師
2005年北海道大学卒。
室蘭日鋼記念病院で家庭医療を中心に初期研修後、川崎市立井田病院で総合内科/緩和ケアを研修。
その後2009年から栃木県立がんセンターにて腫瘍内科を研修し、2012年から川崎市立井田病院にて腫瘍内科・緩和ケアに従事。
また2017年に一般社団法人プラスケアを立ち上げ、暮らしの保健室や社会的処方研究所の運営に携わっている。
日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医。