乳がんとは?症状・罹患率・病期(ステージ)・治療法を改めてチェック

2025.04.24

乳がんは、主に女性が発症する可能性があるがんの一種です。乳がんといってもさまざまな種類があり、治療法や再発リスクが異なります。ここでは、乳がんの症状や罹患率、病期(ステージ)、治療法、再発リスクなどについて詳しくご紹介します。

女性, 乳がん

乳がんは、主に女性が発症する可能性があるがんの一種です。乳がんといってもさまざまな種類があり、治療法や再発リスクが異なります。ここでは、乳がんの症状や罹患率、病期(ステージ)、治療法、再発リスクなどについて詳しくご紹介します。

乳がんとは

乳がんは、乳腺組織にできるがんです。多くは乳頭へ繋がる乳管から発生しますが、乳汁を作る小葉から発生する場合もあります。乳がんの症状は次のとおりです。

  • 乳房のしこり
  • 乳房のただれ
  • 乳房のえくぼ
  • 乳房の形が非対称になる
  • 乳頭から分泌物が出る

なお、上記の症状が現れないケースもあるほか、これらの症状が現れたからといって乳がんだとは限りません。症状の有無に関係なく、定期検診を受けることが重要です。

乳がんの診断数・死亡数・5年生存率(ネット・サバイバル)

9人に1人が乳がんになる時代といわれています。それでは、診断数や死亡数、5年相対生存率について詳しく見ていきましょう。

診断される数

厚生労働省「全国がん登録 罹患数・率 報告 2020」を参考に、乳がんの罹患数について紹介します。

2020年のデータによると、女性の乳がんの罹患数は91,531人で、女性の部位別がん罹患数の中で最も多い結果となっています。2番目に多いのが大腸がん(64,915人)で、肺がん(39,679人)、胃がん(34,551人)が続きます。

死亡数

国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(厚生労働省人口動態統計)によると、2023年における乳がんの死亡数は15,763人で、そのうち女性は15,629人でした。

5年生存率(ネット・サバイバル)

ネット・サバイバルとは、がん患者の生存率を算出する際に、がんのみが死因である状況を仮定して計算する生存率のことです。一般的に用いられてきた相対生存率と異なり、期待生存率を使用せず、純粋にがんによる死亡のみを考慮する方法です。

国立研究開発法人国立がん研究センターの「院内がん登録2014-2015年5年生存率集計」によると、乳がん(女性)のネット・サバイバルは下記のとおりです。

  • 全体……91.6%
  • ステージⅠ……98.9%
  • ステージⅡ……94.6%
  • ステージⅢ……80.6%
  • ステージⅣ……39.8%

乳がんの病期(ステージ)

乳がんは、次のように0期~IV期に分類されます。

出典元:がん情報サービス「乳がん 治療

乳がんの浸潤や大きさに関わるのは0期~IIIC期までで、IV期は他の臓器に転移している場合に診断されます。

乳がんの治療法

乳がんの主な治療法は、手術、放射線治療、薬物療法です。これらが基本的な治療法として、確かなエビデンスを元に行われています。それぞれの治療法についてご紹介します。

手術

乳がんの手術には、乳房部分切除術(乳房温存手術)と乳房全切除術があります。乳房部分切除術は、腫瘍から1~2cm離れたところから乳房の一部を切除する手術です。術後は、放射線照射によって乳がんの再発リスクを抑えます。適用の可否には、がんの大きさや位置、乳房の大きさなどが関係しているため、主治医によく確認し、話し合って決めることが大切です。

乳房全切除術は、乳房を全て取り除く手術です。がんが広範囲、複数のがんが離れた場所に多発しているケースに適用します。

放射線治療

放射線治療とは、がんに放射線を照射することで、がんを小さくしたり消滅させたりする治療法です。乳房部分切除術の後に、残った乳房に照射します。また、乳房全切除術の後にも、手術したところと鎖骨の上の部分に照射する場合があります。

照射の頻度や回数には個人差がありますが、1日1回の照射を週5回の頻度で約4~6週間続けることが一般的です。

薬物療法

乳がんの薬物療法に使用する薬は、ホルモン療法薬、分子標的薬、細胞障害性抗がん薬などがあり、がんの性質や大きさ、身体の状態などに応じて使い分けたり組み合わせたりします。

ラジオ波焼灼療法

ラジオ波熱焼灼療法は、電磁波を利用してがん細胞を焼灼する治療法です。乳房の皮膚に専用の電磁針を挿入し、通電することで電磁波を発生させ、腫瘍に熱を加えて壊死させます。施術後は針を抜いた箇所に絆創膏を貼るだけで済むため、外科手術と比較して侵襲が少なく、治療後の回復も早い傾向があります。

ラジオ波焼灼療法について詳しくは、こちらをご覧ください。
【早期乳がん】メスを使わない「ラジオ波焼灼療法」が保険適用開始。メリットや注意点は?」

乳がんの病期(ステージ)別の治療法

乳がんの病期ごとの治療法についてご紹介します。ただし、ここで紹介する方法は一般的なものであり、治療計画は個々で異なります。

0期

乳房部分切除術(乳房温存手術)か乳房全切除術でがんを切除します。また、早期乳がんについては、2023年12月からラジオ波焼灼療法が保険適用され、治療の選択肢が広がりました。

I~IIIA期

乳房部分切除術か乳房全切除術を行います。がんの大きさ次第では、手術の前に薬物療法を行い、がんを小さくしてから手術をします。リンパ節転移がある場合は、リンパ節を切除する「リンパ節郭清」を行います。がんの状態次第では、術後にも薬物療法の実施が必要です。

IIIB~IV期

がんを小さくしたり消滅させたりすることを目的に薬物療法を行います。状態次第では、手術や放射線治療を行う場合があります。

乳がんの再発リスク

乳がんの再発リスクは、ステージやサブタイプ、遺伝性かどうかなどで異なります。(なお、術後にステージが変化する場合があるため、主治医に再度確認を取りましょう。)リンパ節転移がある場合は、そうではない場合と比べて再発リスクが高まります。また、再発リスクを高める要因としてさまざまな意見や議論が交わされていますが、現時点で確実なリスク要因とされているのは肥満やアルコールなどです。

乳がんの再発は術後2~3年、あるいは5年前後で起きることが多いとされていますが、10年や20年後に再発する場合もあります。再発した乳がんは、最初の乳がんができ始めた頃に別の臓器に転移し、治療による影響から生き延びることで次第に大きくなり、数年から数十年後に目に見える大きさになったと考えられます。

まとめ

乳がんは、他のがんと比べて若い年齢で発症しやすいため、経済的な備えが十分でない時期に罹患してしまうケースも少なくありません。

また、一度がんになってしまうと、たとえステージが低くても民間保険への加入条件が厳しくなってしまい、再発への備えとして入れる保険商品はとても限られてしまいます。

「まさか自分が…」と、ならないように定期検診を欠かさないようにしましょう。

作成日:2022年4月26日
更新日:2025年4月24日

■医療監修

人物, 医者

2005年北海道大学卒。
室蘭日鋼記念病院で家庭医療を中心に初期研修後、川崎市立井田病院で総合内科/緩和ケアを研修。
その後2009年から栃木県立がんセンターにて腫瘍内科を研修し、2012年から川崎市立井田病院にて腫瘍内科・緩和ケアに従事。
また2017年に一般社団法人プラスケアを立ち上げ、暮らしの保健室や社会的処方研究所の運営に携わっている。
日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医。

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