子宮頸がん検診で子宮頸部高度異形成・上皮内がん(CIN3)と診断された場合、どのような治療を行うのか不安に感じる方も多いと思います。
本記事では、子宮頸部高度異形成・上皮内がん(CIN3)とは何か、治療や5年後生存率・再発などとあわせて詳しく解説します。
子宮頸部高度異形成と上皮内がんについて
子宮頸部高度異形成・上皮内がん(CIN3)は、子宮頸部異形成と呼ばれる子宮頸がんの1つ前の段階ので、子宮頸部異形成は、細胞が「がんに進行する確率が高い状態(前がん病変)」、また「悪性・良性の境界にある状態(境界悪性)」の状態を指します。
国際的には、上皮の中に異型細胞が存在する病変を「子宮頸部上皮内腫瘍(Cervical Intraepithelial Neoplasia:略称CIN)」といい、以下3つに分類されます。
異形成の程度 | 説明 |
---|---|
軽度異形成(CIN1) | 異形成が上皮の下1/3以内にとどまっている状態 |
中等度異形成(CIN2) | 異形成が上皮の下2/3以内にとどまっている状態 |
高度異形成・上皮内がん(CIN3) | 異形成が上皮の2/3からすべての層に及んでいる状態 (ただし基底膜は破らずに上皮内におさまっている) |
子宮頸部異形成は自覚症状に乏しいことから、子宮頸がん検診における細胞診で発見される傾向にあります。子宮頸部異形成は微小浸潤扁平上皮がん、浸潤がんへと進展することがわかっていますが、腺病変に関しては上皮内腺がん、微小浸潤腺がん、浸潤腺がんへ進展するといわれているものの、全貌は解明されていません。
子宮頸部高度異形成・上皮内がん(CIN3)は、がん化が始まっている
子宮頸部高度異形成・CIN3(上皮内がん)は、組織のがん化が始まっている状態で、そのうち、20〜30%が数年で子宮頸がんに進行するといわれています。
しかしながら、まだ子宮頸がんではない状態のため、この段階で治療を開始することで高確率で完治が期待できます。
子宮頸部異形成の治療
子宮頸部円錐切除術
子宮頸部異形成の治療法は、病変の程度によって異なります。軽度異形成(CIN1)と中等度異形成(CIN2)は、通常は経過観察します。
これは、CIN1やCIN2の場合、約半数の患者は自然治癒することが報告されているためです。反対に考えると、残りの約半数の患者は自然治癒せず、治療が必要になります。
高度異形成・上皮内がん(CIN3)、CIN2が長期にわたって状態が変わらない、または進展している場合は主に手術適用となります。
術式は主に子宮頸部円錐切除術が選択され、子宮頸部(入り口部分)を円錐形に切除し、病変を除去します。手技が簡便であること、妊娠する能力(妊孕性)を残せることから最も広く行われていますが、ケースによっては、子宮を全摘出する術式を選択することもあります。
子宮頸部レーザー蒸散術
先ほど少し妊孕性について述べましたが、子宮頸部円錐切除術は子宮頸管が短くなるため、妊娠に多少なりとも影響を及ぼすことがあります。一方で、CO2レーザーで病変を焼く子宮頸部レーザー術は子宮頸管が短くならないため、妊娠に影響がないとされています。また、麻酔の必要がなく、身体への負担も少ないために日帰り治療が可能です。
適応条件は病院・クリニックによって異なります。たとえば、特定のHPV型に感染していることが適応条件の場合があります。なお、HPV型を調べる「HPV型別判定」は、軽度異形成や中等度異形成が1年以上持続している場合に保険適用で受けることが可能です。
子宮頸部異形成の再発について
子宮頸部円錐切除術は、子宮を失わずに治療できる一方で、子宮頸部異形成が再発する可能性があります。切断した組織にがんが認められた場合の再発率は、9~16%と報告されています。一方、切断した組織にがんが認められなかった場合の再発率は2~4%と報告されています。
手術で除去された病変以外にも異形成が存在しているケースや、手術後に再度HPV感染が起きることでリスクが高まるケースもあります。
再発のリスクを抑えるためには、定期的に検診を受けることが不可欠です。定期検診では、子宮頸部の状態を確認し、再発や新たな異形成の早期発見に努めます。再発や新たな異形成が見つかった場合には、適切な治療を受けることで、その進行を防ぎ、健康な状態を維持することが期待できます。
出典:Anderson ES, Pederson B, Nielsen K. Laser conization:the results of treatment of cervical intraepithelial neoplasia. Gynecol Oncol 1994;54:201-4(レベルⅢ)
出典:Vedel P, Jakobsen H, Kryger-Baggesen N, Rank F, Bostofte E. Five year follow up of patients with cervical intra-epithelial neoplasia in the cone margins after conization. Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol 1993;50:71-6(レベルⅢ)
子宮頸部高度異形成の術後すぐに入れる保険
手術後の異形成の状態によっては、がん保険への加入が困難な場合があります。
特に、高度異形成の場合は、手術後に一定期間(通常2年以上)経過しないと加入が認められません。
保険会社によって条件が異なるのでご自身で調べると煩雑になりがちですが、手術を経験された方の選択肢の一つとしてシンプルなのが、MICIN少額短期保険の「がんを経験した女性を支えるがん保険」です。
子宮頸部異形成や上皮内がんになった場合、手術から6か月が経過すれば申込できるがん保険で(加入にはその他条件・審査があります)、がんと診断されたら一時金80万円が給付されます。
ご自身の病気や貯蓄の状況などを考え、今がんになると経済的にピンチ、という場合は検討してみると良いかもしれません。
また、手術を伴う異形成であれば、中度異形成や軽度異形成でも加入が可能です。早期からがん保険の保障を受けることで、将来の経済的なリスクに備えることを検討しましょう。
■医療監修
西 智弘 医師
2005年北海道大学卒。
室蘭日鋼記念病院で家庭医療を中心に初期研修後、川崎市立井田病院で総合内科/緩和ケアを研修。
その後2009年から栃木県立がんセンターにて腫瘍内科を研修し、2012年から川崎市立井田病院にて腫瘍内科・緩和ケアに従事。
また2017年に一般社団法人プラスケアを立ち上げ、暮らしの保健室や社会的処方研究所の運営に携わっている。
MICIN-2406-S-0387-00