がん治療後のつらい倦怠感を軽減するには?原因・対策・日常生活への影響を専門家が解説

2025.08.07

がん治療に伴う倦怠感は、診断から治療後に至るまでの期間を通して、患者さんから最も多い訴えとなっており、がんの種類や治療によって程度は様々ではありますが、多くのがんで倦怠感を経験することが知られています。 

特に化学療法治療中には、約80~90%の方が倦怠感を経験することが明らかとなっていますが、治療前や治療後、さらには治療を完遂したあとも一定の割合で倦怠感を経験すると言われています。 

本記事では、倦怠感の原因と改善するための対策を解説していきます。 

倦怠感の原因 

がんを経験された多くの方が悩まされる倦怠感について、改めて定義をみてみると、National Comprehensive Cancer Network腫瘍学臨床実践ガイドラインでは、「最近の活動に合致しない、日常生活機能を妨げるほどの、がんまたはがん治療に関連した、つらく持続する主観的な感覚で、身体的、感情的かつ/または認知的倦怠感」と示されています。 

つまり、身体的に「だるい」という感覚だけでなく、倦怠感には感情的側面(気分の落ち込みや不安など)や認知的側面(ネガティブ思考など)といった多面的な要素が含まれており、これらの要素は相互に影響しあっています。 

倦怠感が生じる明確なメカニズムについては解明されていませんが、がんと治療によって炎症性サイトカインが産生され、倦怠感の知覚を調整する中枢である脳にシグナルを送ることで倦怠感が誘発されることが報告されています。 

さらに、倦怠感はがん治療だけでなく、身体活動量や睡眠などの行動因子、精神心理的要因、身体機能や体組成などの生理学的な要因によって増大する可能性があるとされています。 

たとえば、がん治療中に生じる倦怠感によって活動量が低下すると、さらに倦怠感が強まり、体を動かすことがより一層億劫になるといった悪循環に陥ることがあります。 

また、がんを抱えることで生じる心配や不安といった感情は、誰もが抱く自然な反応ですが、倦怠感はこうした感情的側面も含んでいます。 

このような倦怠感は、主観的な感覚に加えて、筋力低下や日常生活動作能力の低下に影響することが明らかになっています。具体的には、2010年に公表された報告では、倦怠感と握力の関連をみていますが、倦怠感が強い方は筋力が低下していることが明らかとなっています。 

さらには倦怠感が重度な方は、日常生活動作を含む能力障害を多く抱えていることも明らかとなっています。このように倦怠感は日常生活にも関連しており、生活機能生活の質(Quality of life)にも影響するため、適切な対処が重要になります。 

倦怠感への対策 

倦怠感への対策については、大きく薬物療法と非薬物療法の2つに大別されます。113編の研究成果からまとめられた報告においては、薬物療法の効果は乏しく、非薬物療法が効果的であると示されています。そこで特に有効性が示されている非薬物療法について、治療方法をご紹介します。 

・身体活動 

倦怠感に対しては、身体活動の最適レベルを維持することが推奨されており、運動プログラムの開始や継続することが重要と示されています。 

身体活動の目安として、週当たり150~300分の中等度の身体活動、高強度であれば75~150分を参考にするとよいでしょう。運動プログラムとしてはウォーキングや自転車といった有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせて行うことが有用です。 

有酸素運動については、「ややきつい」強度で、1回あたり30分、週3回の運動を12週間継続することが推奨されています。筋力トレーニングについても、「ややきつい」強度で、上下肢12~15回を2セット、週2回の運動を、12週間は継続することで、倦怠感の改善に繋がることが報告されています。 

また運動については、ヨガも有効であるとされていますので、ライフスタイルにあわせて運動プログラムを選択しましょう。運動を進める際には、骨や身体の状況、安全性などには十分留意する必要があります。 

・マッサージ療法 

5つの研究成果、計667名の患者をまとめた報告では、マッサージは倦怠感の軽減に有効であることが示されており、推奨されています。 

・心理社会的介入 

倦怠感には身体側面のみならず、感情・認知的側面も関わっています。そのため、物事の捉え方を修正したり達成感が得られる活動を取り入れたり、ストレス対処法などのスキルを学ぶことで行動変容を図る認知行動療法や、医療者から知識や情報を得ることで疾患やストレスに対する理解と不安の軽減を図る心理教育などがあり、有効性が報告されています。認知行動療法は睡眠障害の治療としても有効性が示されており、倦怠感改善にもつながると言われています。 

まとめ 

がんと関連する倦怠感は多くの方が抱える悩みとなっています。倦怠感は単に身体の「だるさ」だけでなく、感情や認知的側面も関連するため多面的に捉える必要があります。対策としては身体活動や運動が特に有効です。有酸素運動と筋力トレーニングや、ご自身のライフスタイルにあわせて生活の中で運動を取り入れていきましょう。 

執筆者プロフィール:

福島 卓矢(ふくしま たくや)理学療法士

日本がん・リンパ浮腫理学療法学会理事

2010年長崎大学卒、2019年長崎大学博士課程修了。これまで大学病院やがんセンターで、化学・放射線治療を行う血液がん、周術期の消化器がん、骨軟部腫瘍、頭頸部がん、脳腫瘍などの診療をおこなってきた。現在は関西医科大学で学生教育に携わりながら、関連病院で進行がんや周術期の食道がん患者の診療に従事し、臨床研究もあわせて進めている。 

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