
乳がんの治療中やホルモン治療中は、「不眠」や「睡眠障害」に悩まされる方も少なくありません。そんな乳がん患者さんの日常的な悩みに寄り添ってくれるのが、女性のための乳腺専門クリニック「mammaria tsukiji(まんまりあ つきじ)」(以下、マンマリア)の院長、尹玲花(いん・れいか)先生です。「治療中や治療後の生活を少しでも心地よく過ごせるようにサポートしたい」と語る先生に、乳がん治療中やホルモン治療中に起こりやすい、不眠・睡眠障害のケアや対処法を伺いました。

尹玲花(いん・れいか)先生プロフィール
乳腺外科医。聖路加国際病院乳腺外科で約10年間、乳がん診療の最前線で豊富な臨床経験を積む。2017年に女性のための乳腺専門クリニック「mammaria tsukiji」を開院し、高い専門性に基づく質の高い医療を提供している。一方で、患者さんの気持ちに寄り添う丁寧なコミュニケーションにも定評があり、安心して相談できる医師として支持を集めている。
診断直後の不安による不眠とホルモン治療による不眠
―乳がん治療中やホルモン治療中に、不眠や睡眠障害が起きてしまうのはなぜですか?
尹先生:乳がん治療による睡眠障害が起きる理由に関しては、大きく2パターンにわけられます。
ひとつは、がんと診断されて日が浅い段階の不眠。「これからどうなるんだろう」「仕事や家庭は大丈夫だろうか」という不安感から眠れなくなってしまう方もいらっしゃいます。
もうひとつは、ホルモン治療中の不眠です。薬の影響でホットフラッシュ(急なほてりや発汗)が起こったり、体温調整やホルモンバランスの乱れが原因で睡眠が浅くなってしまうことがあります。
どちらの理由であれ、眠れないというのは本当にしんどいこと。生活の質を左右する大きな問題だからこそ、少しでも楽になってもらえるように、さまざまな角度から患者さんをサポートできたらと思っています。
―不安感からくる不眠と薬の副作用による不眠とではケアも変わりそうです。不安感からくる不眠を抱える患者さんにはどのようなケアが大切だとお考えですか?
尹先生:「不安で眠れない」という患者さんには、その辛い気持ちを吐き出せる場所が必要だと思うので、「いつでも話を聞くよ。私たちがそばにいるよ」と伝えることを何より大切にしています。
診察中に相談していただくのはもちろんですが、当院ではLINEの相談窓口からのご相談も受け付けています。診療時間の関係で返信にお時間をいただくこともありますが、患者さんの気持ちが少しでも軽くなるようなお手伝いができたらと思っています。
また、ずっと不安な状態が続くわけではなく、時間とともに心のフェーズは変化していきます。必ずつらい時期を脱する瞬間が来るので、それまで一緒に頑張ろうね!と励ましたり、患者さんに伴走するような気持ちで寄り添うことも大切にしています。
―そういう病院だと、患者さんも安心して治療に取り組めそうですね。薬の副作用による不眠を抱える患者さんには、どのようなケアをおすすめしていますか?
ホルモン治療中の副作用による不眠の場合は、投薬や専門的な医療機関へのご紹介など、医療的なケアを第一優先にしています。
医療的なケアにプラスして、眠れない夜を少しでも快適に過ごせるようにといった意味では、アロマ系のアイテムでリフレッシュするのもおすすめです。オーガニック化粧品ブランドの『ニールズヤード』さんと一緒に乳がん患者さん向けのセミナーを開催したときに、ストレスケアに香りを取り入れることでプラスαのリラックス効果があると教えていただきました。
当院では、乳がん患者さんのお役に立てるような商品をご紹介する「セレクトショップ」を設けているのですが、そちらでもアロマのアイテムを取り扱っていますよ。
「マンマリア」のセレクトショップで取り扱っているおすすめアイテム

右)ニールズヤード レメディーズ グッドナイトピローミスト
尹先生:セレクトショップに置く商品は、「マンマリア」の全スタッフに試してもらい、とくに人気があったアイテムを厳選しています。
『グッドナイトピローミスト』は、使用したスタッフから「これを使うと、毎日いきいきと働けます」という感想が多く寄せられました。また、『レモン&コリアンダー デオスプレー』は、柑橘系のフレッシュな香りで汗のニオイをカバーするアイテム。ホットフラッシュで汗をたくさんかいてしまう方のリフレッシュにもいいと思います。
セルフケアで心と体の負担を軽減
―睡眠障害を抱える患者さんの中には、プラスαの選択肢があると知るだけで気持ちが楽になる方も多そうですね
尹先生:まずは医療的なケアが大切ですが、香りでリフレッシュするなど、自分が心地よくいられるようなセルフケアを取り入れることで、治療中の心や体の負担が少しでも軽くなればうれしいです。
―乳がん治療中の「睡眠のケア」は、まさに治療の一環なのですね
尹先生:そうですね。私たち医療者にとっては、患者さんが治療中につらくなってしまい、ホルモン療法を途中でやめてしまうことが一番残念なんです。とくに睡眠障害は、治療中のつらさにも直結する問題。だからこそ、患者さんが少しでも前向きに治療を続けられるように、さまざまなサポートを行うことが大切だと考えています。
患者さんが困っていることをボールとして投げてくれたら、私たちはそれを受け止めて返していく。返すボールの種類が多ければ多いほど、患者さんは安心できますよね。
「なんでも応えてくれる」と思ってもらえたら、悩みを言いやすくなるし、治療もスムーズに進む。そんな風に寄り添っていけたらと思っています。
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