
乳がんの治療中は、シミや吹き出物ができやすくなったり、乾燥してカサついたりといった肌トラブルの副作用に悩まされる方も少なくありません。しかし、「病気や治療に直結した悩みではないから医師に相談しにくい……」「この程度のことを聞いていいのかな……」とためらう方も多いようです。「そうしたお悩みを取りこぼさず、患者さん一人ひとりに寄り添いたい」と話すのは、女性のための乳腺専門クリニック「mammaria tsukiji(まんまりあ つきじ)」(以下、マンマリア)の院長 尹玲花(いん・れいか)先生。
今回は、乳がん治療中や術後に起こりやすい肌トラブルの対処法について、尹先生に伺いました。

尹玲花(いん・れいか)先生プロフィール
乳腺外科医。聖路加国際病院乳腺外科で約10年間、乳がん診療の最前線で豊富な臨床経験を積む。2017年に女性のための乳腺専門クリニック「mammaria tsukiji」を開院し、高い専門性に基づく質の高い医療を提供している。一方で、患者さんの気持ちに寄り添う丁寧なコミュニケーションにも定評があり、安心して相談できる医師として支持を集めている。
肌トラブルを感じたら「刺激を減らす・紫外線を防ぐ」を大切に
―なぜ、乳がんの治療中に、肌トラブルが起こりやすいのでしょうか?
尹先生:乳がんの治療では、ホルモンの働きを抑えてがんの進行や再発を防ぐためにホルモン療法を行うことが多くあります。この治療によって肌状態が大きく変化し、シミができやすくなる、乾燥してカサつく、肌荒れしやすくなる、ニキビや吹き出物が顔だけでなく全身にできるといった症状が出やすくなります。
乳がんの治療は長期にわたるので、その間に年齢を重ねることも影響しますが、ホルモンバランスの変化によって、以前と体質が変わったと感じる方は少なくありません。
―患者さんからの肌トラブルのお悩みに、どのようなアドバイスをされていますか?
尹先生:肌トラブルが深刻な場合は専門医をご紹介しますが、乳がん治療中は女性ホルモンの低下によって皮ふが薄くなり、肌が敏感に傾きやすくなります。そのため、刺激をできるだけ減らすことと紫外線を防ぐことは非常に大切だとお答えしています。
また、運動習慣をつけることも重要です。これは肌トラブルのお悩みに限ったアドバイスではないのですが、当院で乳がんの治療をされている方全員におすすめしています。日常的に運動をすると、乳がんの再発や転移などのリスクを下げ、予後の改善の効果も期待できることがわかっているんですよ。 運動することで肌ツヤがよくなるというデータもありますし、ホルモン療法によるさまざまな副作用の軽減にもつながるんです。
―そうなんですね。どんな運動が適していますか?
尹先生:週に150分の運動時間を確保しましょうとお伝えしていますが、運動の強度としては、ウォーキングなどの日常的に続けられる簡単なもので大丈夫です。大切なのは、続けること。無理をして結局続かなかった……となるのが一番よくないので、自分の体調やライフスタイルに合った運動をとり入れましょう。
「マンマリア」では、乳がん経験者向けのパーソナルジムも併設していて、スポーツ医学の博士号を取得したトレーナーが、乳がん治療中の方に適した運動の指導を行っています。
直接的な乳がん治療はもちろんですが、肌のお手入れをしたり運動したりして、生活の質を上げることも大切だと考えています。
生活をよりよくする工夫で、乳がん治療中の日々を快適に
― 「マンマリア」では、乳がん治療中の方をサポートするためのスキンケアアイテムやグッズなどを取りそろえていますが、どのようなきっかけで始めたのでしょうか?
尹先生:私は、患者さんに寄り添いたい、がんを経験してもよりよく生きていくお手伝いをしたい、という思いでこの病院を開業しました。そんな中、がんを患ったことのある友人から、『病院の待合室って、ただ待つだけで何もすることがない。この場所に何か工夫をしたら、そういう思いも患者さんに届くんじゃない?』とアドバイスをもらったんです。
そこで、病院に来る目的以外にも小さな楽しみやプラスアルファの時間を過ごしてもらいたいと始めたのがセレクトショップです。ここには、乳がん患者さんの目線に立ち、その方々に本当に手に取ってもらいたいと思える商品だけを置いています。商品はすべて、クリニックの全スタッフで試して、とくに人気があったアイテムだけを厳選しているんです。

尹先生:待ち時間にちょっとした買い物をしたり、友達へのプレゼントを選んだり。病院に来る時間を、少しでも心地よく過ごしてもらえたらという思いで取り組んでいます。
「マンマリア」のセレクトショップで取り扱っているおすすめアイテム

右)MTメタトロン MT プロテクトUVジェル
尹先生:『MTメタトロン』は、代表ご自身が乳がん経験者であり、女性の健康啓発に力を入れたいという思いがあると伺って、取り扱いを決めたブランドです。
『MT クレンジング・ジェル』は、肌にやさしい処方でクレンジング時の摩擦も軽減できます。
『MT プロテクトUVジェル』は、みずみずしく軽い使い心地で、日焼け止め特有の重さが苦手……という方にもおすすめ。
スタッフからの人気も非常に高い商品です。

―セレクトショップやメディカルフィットネスなど、治療以外のサポートがとても充実していることに驚きました。先生が治療以外のケアを大切にする理由を教えてください
尹先生:乳がんの治療は長く続くからこそ、毎日をどう心地よく過ごすかが大切になってくると思うんです。
肌トラブルをケアしたり運動をとり入れたりして、生活そのものを豊かにすることで、長く続く治療も前向きに乗り越えていけるんじゃないかなと考えています。
乳がんを治療しながら豊かに生きていく。そのお手伝いができたらうれしいです。
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