【もっと知りたい大腸がんのこと】 VOL.2 大腸のスペシャリストに聞く!早期発見、予防のために受ける大腸内視鏡検査とは?

2026.06.11

40代から増え始める罹患数2位、死亡数1位の大腸がん。早期発見、予防のために受けるべき大腸内視鏡検査の詳しい情報を引き続き、がん研有明病院下部消化管内科の千野晶子先生にお聞きしました。検査前の食事制限、下剤、寝ている間にできる検査や検査時間、検査費用、もしもポリープがあったらどうするか、について乳がんを経験した医療ジャーナリストの増田美加が紹介します。

お話を伺ったのは… 

千野晶子(ちのあきこ)先生
がん研有明病院 下部消化管内科 副部長 

東邦大学医学部卒業後、昭和大学藤が丘病院にて臨床研修後に消化器内科へ入局。のちに旧癌研究会附属癌研病院へ所属。米国ミシガン州立大学救急病院での臨床研究を経て、現在のがん研究会有明病院の医長から現職へ就任。所属学会は日本消化器病学会、日本消化器内視鏡学会、日本内科学会、日本遺伝性腫瘍学会、日本がん治療学会、日本大腸検査学会、日本大腸肛門病学会に所属し、評議員および和文編集員等を兼務。大腸のスペシャリスト。

取材・執筆/増田美加(女性医療ジャーナリスト)

予防のために50歳を過ぎたら“一度は大腸内視鏡検査”を

今、日本女性の12人に1人が大腸がんにかかる時代*1。近年、大腸がんでの死亡数の増加が指摘されていて、女性での臓器別がん死亡数の第1位になりました(2021年)。また日本では、年間約2万5千人が大腸がんで亡くなっています*2。大腸がんを予防する効果的な方法はないのでしょうか? 

「科学的根拠があるとされている大腸がんの予防法は、男女共に適度な運動と食物繊維やカルシウムの摂取です。そして、最も効率的な予防法としては、50歳を過ぎたら“一生に一度は大腸内視鏡検査”を行うということです。特に、大腸がんのリスクがある方は、受けることをお勧めします」と千野晶子先生。 

男女共に大腸がんのリスクになりうるのは、喫煙(受動喫煙も含む)、飲酒、肥満、糖尿病、血縁者に大腸がんにかかった人が複数いること(遺伝の要素を疑う家族歴)。また、加工肉や赤肉(牛肉や豚肉、羊肉など)の頻繁な摂取と慢性の便秘です。喫煙は大腸ポリープが増えるとも言われています。 

最も効率的な予防法は大腸内視鏡検査を一度は受けることだそうですが、より一層、大腸内視鏡検査を受けたほうがいい人は、上記以外にも、いるのでしょうか? 

「便潜血検査で要精密検査という結果が出た場合は、そのまま放置せず、ぜひ大腸内視鏡検査を行ってください。 

また、50歳以上で一度も受けたことがない人は、全大腸内視鏡検査をおすすめします。内視鏡は肛門からカメラを挿入し、直腸から結腸をさかのぼり、盲腸(小腸の出口)までを詳しく観察します。病変があれば採取して病理検査をします。病変が大腸粘膜の表面(粘膜内か粘膜下層の浅い部分)にとどまっていれば、内視鏡で完全に切除することが可能です。 

大腸内視鏡検査を一度でも受けることのメリットは大きいです。自分の大腸の中を見てもらうことで大腸がんのリスクがどの程度かがわかり、この先どんな検査をどんなタイミングで受ければいいかの情報が得られます。もし検査のときに、ポリープが見つかればその場で切除してもらえて、大腸がんの予防にもなります。生涯にわたっての大腸がんに対する意識改革の機会になると思います」と千野先生。 

*1 がん情報サービス 最新がん統計 累積がん罹患リスク(2021年データに基づく) 
*2 がん情報サービス 最新がん統計 部位別がん死亡数2024年 

血便などの症状があったらどうする?

自覚症状を感じた場合は、どうでしょうか? すぐに大腸内視鏡検査を受けたほうがいい症状はありますか? 

「大腸がんの初期症状で比較的多いのは、血便、排便習慣の変化(急に便秘になったり、下痢になったり)、便が細くなる、水っぽい、残便感、体重減少、貧血、しこりが触れるなどです。血便は、便に粘液状の血液がついていたりします。血液だけがちらばるのは、痔(じ)の可能性があります。けれども、痔がきっかけで大腸がんが見つかることもあるので、自己判断せず、出血があれば大腸内視鏡検査を行ってください。 

また、血縁者に大腸がんにかかった人が複数いて、ご自身の大腸がんが心配な方も、消化器の専門施設で大腸内視鏡検査のご相談をしてください。 

しかしながら大腸がんは、早期の段階は無症状が多いのです。症状が出たときには進行していることもあります。血便があれば、速やかに受診して大腸内視鏡検査を受けることをお勧めします」(千野先生) 

症状がある人、便潜血で要精密検査となった人、血縁者に多く心配している人は、大腸内視鏡検査を行っている消化器内科、胃腸科、内視鏡診療科を受診しましょう。肛門科や痔の専門外来などでは、大腸内視鏡検査を行っていない施設も少なくないので調べてから受診してください。病院選びは、ホームページなどで大腸内視鏡検査数が多く、大腸がんの情報を熱心に掲載しているところがいいでしょう。 

症状がなくても検診は大切です。日本では、40歳以上を対象に対策型検診(市区町村単位)で、便潜血反応検査による大腸がん検診が勧められています。こちらは積極的に利用して「要精査=1回もしくは2回の陽性*3」があれば、大腸内視鏡検査を受けることをお勧めします。基本的に大腸がん検診は、年1回受けることが勧められています。 

*3 本記事の内容は執筆時点(2026年5月)の指針に基づいていますが、『がん検診のあり方関する検討会(厚生労働省)』において、受診者負担の軽減や検体提出率向上を期待し、2027年度から「1回法」が適応される見込みです。

大腸がんを早期発見するための大腸内視鏡検査の受け方

千野先生のアドバイスを受けて、大腸がんを早期発見するために、大腸内視鏡検査をどのようなタイミングで受けたらよいかをまとめました。 

【大腸内視鏡検査を受けるタイミング/千野先生からの提案】

検査を快適にするために前処置も変わりつつある 

「恥ずかしい」「つらい」「前処理が大変」という理由から、大腸内視鏡検査を敬遠する人も少なくないと言います。そのような印象を減らすために、医療機関はさまざまな取り組みをしています。 

「まず、鎮痛剤や鎮静剤(楽に検査するための安定剤)の使用を選択できるようになりました。これによって、痛みなく、寝ている間に検査を終了することができます。ホームページなどで「無痛全大腸検査」と謳っている医療機関がありますので、そういった医療機関を利用する手もあると思います。また、検査前の食事制限や下剤も変わってきました」と千野先生。 

前日の食事制限で使う検査食は、以前より美味しくなったと評判です。消化が良く、腸に残りにくい低残渣食(ていざんさしょく)は、種類も豊富で市販もされています。 

また、当日の腸管洗浄液の種類も増えています。医療機関によって異なりますが、しょっぱいレモン水、うすいポカリスエット味、甘い梅汁の味、生姜リンゴジュース味、錠剤5錠に水200㎖を10回飲むというタイプのものも出てきました。以前より飲みやすくなったと言われています。 

「これらの前処置は、腸の中を空っぽにして、カメラの通りをよくするように腸内を潤わせておくためにも大切です。大腸内視鏡検査は、カメラで腸内をくまなく観察する検査です。腸内が綺麗に空っぽになっていれば、腸内が良く見えて、検査の精度も上がります。 

もしもポリープが発見された場合には、治療対象かどうかや治療のタイミングなどを検討することができます。 

検査自体の所要時間は、15~30分程度。準備や検査後の休憩を含めると約4~5時間でしょうか。費用は、ポリープの切除の有無によって変わりますが、保険適用で3割負担の場合、約6000円~2万円で行うことができます」(千野先生) 

もし、大腸内視鏡を行ってポリープを切除した場合、民間保険に入っていれば、ポリープ切除に伴って給付が受けられる場合があります。費用のほとんどを賄えることが多いので、ご自身の保険を確認してください。 

前処置が大変でつらいという声もありますが、下剤と腸管洗浄液で便を残さず、空っぽにしておくことは、検査を受ける私たちにメリットがあることがよく理解できました。 

次回は、検査でポリープが見つかったら、どうするの? ポリープの大きさによって大腸がんになるかどうかがわかるの? 内視鏡で取れるポリープと外科手術で取るポリープはどう違うの? などについて引き続き、千野晶子先生に伺って参ります。 

医療ジャーナリスト増田美加

取材・執筆/増田美加(女性医療ジャーナリスト) 

当事者視点に立った女性のヘルスケアや医療情報について執筆、講演を行う。 

乳がんサバイバーでもあり、がんやがん検診の啓発活動を行う。 

NPO法人「乳がん画像診断ネットワーク(BCIN)」副理事長。NPO法人「女性医療ネットワーク」理事。認定NPO法人「キャンサーネットジャパン(CNJ)」乳がん体験者コーディネーター。NPO法人「日本医学ジャーナリスト協会」会員。 

増田美加オフィシャルサイト
http://office-mikamasuda.com/

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