【体験談】「がんになった後の、今の自分の方が好き」。27歳で乳がんを経験した、かおまるこさんが見つけた新たな生き方

2025.06.30

看護師としてキャリアをスタートさせた27歳のある日、乳がんの告知を受けた”かおまるこ”さん。

Instagramにてありのままの闘病生活を投稿。同じ悩みを抱えるがんを経験された方とも交流を重ねてきました。

治療によるキャリアの中断、妊娠・出産というライフプランの変更、そして抗がん剤による脱毛といった副作用―。

「がんになったことは決して良いこととは言えない。でも、がんになった後の今の自分の方が好きなんです」。そう力強く語る彼女に、告知から現在に至るまでのリアルな体験と、そこから見出した希望について伺いました。

27歳だった2023年12月、入浴中にしこりを見つけ24年1月より治療を開始。ステージは2B、サブタイプはトリプルポジティブ。Instagramではリアルな乳がん体験を動画で発信しており、フォロワー数は現在3.4万人

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「余命宣告も覚悟した」―乳がん診断確定でホッとした理由

― まず、乳がんの告知を受けた時の心境や状況について教えていただけますか

かおまるこさん(以下、かおまるこ): きっかけは、お風呂で体を洗っている時に、2cmくらいのゴムボールのようなしこりに自分で気づいたことでした。なんだろうと思ってネットで調べたところ、がんのしこりの特徴にはあまり当てはまらなかったのですが、念のためクリニックを受診することにしました。

先生からも「年齢的にもまだ若いからがんではないと思うけど、念のため検査しましょう」という感じだったのですが、検査結果を聞くために予約した2週間後よりも前にクリニックから「できるだけ早く結果を聞きに来てください」と電話があったので、その時点で薄々と勘づいていました。なので、実際に告知された時は「やっぱりな」というのが正直な感想でしたね。

― そこまで精神的には強いショックを受けなかった感じでしたか?

かおまるこ:告知直後はショックというよりも、まだ自分事として捉えきれていない、夢の中にいるような感覚でした。むしろ、不安が大きかったのは、そこから大きな病院で精密検査の結果が出るまでの1か月間です。

その間は自分のステージも、サブタイプも分からない状況で、脇にもしこりがあるのを感じていたので、「もしかするともう全身に回っているかもしれない」「余命とかも言われる可能性もあるのかな」と、毎日頭の中でぐるぐる考えていました。実際、ステージ2Bでリンパ節への転移もあったのですが、もっと悪い可能性も考えていたので診断が確定した時は、正直ホッとしました。

「選択肢を奪われた感覚だった」。看護師1年目で絶たれたキャリアと、妊娠・出産の壁

― 20代という若さでがんになったとなると、その後のライフプランも色々と変更を余儀なくされそうですね。

かおまるこ: そうですね。乳がんになった当時、私は中途で看護学校に入って、やっと看護師になった1年目のときでした。だいたい看護師って、3年は病院で働いて、そのあと色々キャリアチェンジをしていく感じなのですが、私は1年目で休職を経て退職をしてしまっているので、まずその波からは逸れちゃったな、みたいな。

病棟で看護師をするとなると夜勤とかもあるので、できるだけ若いうちにやっておきたいというところもあったのですが、体力がかなり落ちちゃったので、そういった面でかなりライフプランが狂っちゃったなと感じています。

がんになる前に既に結婚はしていたのですが、今ホルモン療法を受けているので、この先5年間は妊娠・出産ができません。さらに、抗がん剤治療によって卵子がダメージを受けている可能性があり、先生からは「5年後に妊娠できる保証もない」と説明を受けました。

もともと「今すぐ子どもが欲しい」と強く思っていたわけではないのですが、それでも、病気によって「選択肢を奪われた」という感覚はずっと心の中にあります。

― 卵子凍結という選択肢はなかったのでしょうか?

かおまるこ: 結論から言うと、間に合わなかったんですよね。私の乳がんは進行が早い可能性があり、一刻も早く抗がん剤治療を始める必要がありました。卵子凍結は、排卵を誘発するために準備期間が必要で、スケジュール的に間に合いませんでした。

がん告知直後に、すぐに行動できていれば間に合ったのかもしれないのですが、当時は精神的にも余裕がなく、卵子凍結にかかる費用の助成金制度について自分で調べて気づいた時には、もう間に合わない状況でした。こうした情報は、もっとアクセスしやすくなるといいのにと思っています。

一番つらかった”見た目の変化”。SNS発信を力に変え、ウィッグやファッションを楽しむ

― 治療の副作用で、特につらかったことは何ですか?

かおまるこ: 私は「見た目の変化」が一番つらかったです。吐き気や倦怠感、ホットフラッシュなどもあったのですが、なによりも見た目の変化が一番イヤでした。髪の脱毛もそうですし、眉毛もまつ毛も抜けてしまうので、人相が変わってしまう。むくみも加わり、鏡を見るのが本当にイヤでした。「なんでこんな思いをしなくちゃいけないんだろう」と、何度も思いましたね。

― その辛い状況を、どのように乗り越えたのでしょうか。

かおまるこ: 私は治療の記録をSNSで発信し続けていたのですが、それが大きな力になりました。「同期で看護師になった子たちは世のため人のために働いているのに、私は病気でできなくなってしまった。でも、せっかく若くして珍しい経験をしたのだから、この経験を誰かの役に立てないと勿体ない」という気持ちがあったからです。

例えば、ウィッグを選ぶ際も、髪が抜けたからにはいっそ楽しもうと思って、がんになる前は、黒髪ロングヘアーで、おとなしい感じの見た目だったのですが、オレンジとか青とか金髪とか色んな種類のウィッグを買ってみました。

あと値段が高いと、色んな種類は買えないじゃないですか。フォロワーさんともDMでそういう話をしていて。なので、とにかくお手頃なものをということで、ブライトララさんのウイッグを好んで着けていました。

また、ファッションも普通に生きていたら自分がしないようなものに挑戦してみようと思って、これまで買ったことのないようなスタイルの服を買ってみたりもしました。

「こういう服を着てみたいからこのウィッグを買ってみよう」とか、お洋服を選ぶのと同じ延長線上でコーディネートを楽しんでいましたね。

そうした日常の姿を発信すると、「楽しんでいる姿を見て元気が出ます」といったコメントをいただくことがあり、それが嬉しくて。「誰かの役に立っている」という実感が、自分自身を励ましてくれました。

常に頭にある「再発」の2文字。経済的な不安と、”情報にアクセスしづらい”という壁

― 再発に対する不安とは、どのように向き合っていますか?

かおまるこ: がんサバイバーなら誰でもそうだと思いますが、「再発」という2文字は、常に頭の中にあります。でも最近は、その不安を考えずにいられる時間が増えてきました。目の前のやりたいこと、楽しいことに意識を集中させること、そして「再発しないでいられた時間」を一日一日積み重ねていくこと。あとは、時間が解決してくれる部分もあると信じています。再発予防のために、嫌いだった運動を始めたり、食事の量や頻度を意識したりもしています。

― 経済的な不安はいかがでしたか?

かおまるこ: やはり大きな不安がありました。高額療養費制度などには本当に助けられましたが、それでも普段はかからないお金が出ていきます。母ががん保険に入ってくれていたので命拾いをしましたが、それがなければ治療のために仕事を休むことはできなかったと思います。

何より大変だったのは、体も心もつらい状況の中で制度を利用するための申請を自分で調べて行わなければならなかったことです。「がん相談支援センター」のような窓口はあっても、その存在自体を知ったのは最近でしたし、じゃあ今行くかといえば、少しハードルが高いと個人的には感じています。私の治療・就労状況では、どの制度が使えるのか、気軽に相談できる窓口にもっと簡単にアクセスできたら、と強く思いました。

「自分だけじゃない」。サバイバー同士の交流が心の支えに。私がコミュニティを作りたい理由

― 闘病中、最も心の支えになったものは何でしたか?

かおまるこ: それは間違いなく、SNSでがんを経験された方との交流です。当事者ではない人には相談しにくい悩みも、同じ経験をした仲間からの「わかるよ」の一言で、信じられないくらい救われるんです。「頑張っているのは自分だけじゃない」と感じられることが、何よりの支えになりました。

以前、フォロワーさんとのオフ会を開催したのですが、サバイバーさん同士が楽しそうに情報交換したり、励まし合ったりしている姿を見て、こういう場所を作りたい、と強く思いました。病気の話をしても暗くならず、お互いに元気を与え合えるようなコミュニティ。

それが、この経験を活かして私がやるべきことだと感じています。他にも、今後、闘病生活を振り返って、あの時の自分が「欲しかったもの」「欲しかったサービス」を作っていきたいです。

同じ経験をするあなたへ。「治療は絶対に終わる。今の自分の方が好き」

 最後に、この記事を読んでくださっている、今、がんと向き合っている方へメッセージをお願いします。

かおまるこ: 治療中は本当につらくて、目の前のことに必死だと思います。でも、始まったことには必ず終わりがあります。終わってみれば、意外とあっという間だったと感じるかもしれません。

がんになったことは決して良いこととは言えませんが、なったことで気づけた大切なこともたくさんありました。周りからは「がんになる前より、今の方がいきいきしてるね」とすごく言われますし、私自身もそう思います。なった後の、今の自分の方が好きなんです。

だから、悪いことばかりじゃありません。今は落ち込んでも、泣いても大丈夫。でも、その先に必ず前を向ける楽しい瞬間が来る。そのことだけ頭の片隅に置いておいてほしいです。

※本記事の内容については、取材当時の個人の体験を元に構成したものであり、治療等の条件はすべての方に当てはまるわけではありませんし、治療方針等については当社が推奨するものでもありません。ご自身の主治医とよく話し合い、最善の治療を選択してください。

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