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【体験談】複数回の転移の経験と、人工膀胱(オストメイト)の生活のリアル [60代・乳がん、虫垂がん]

2025.02.06

東京都にお住まいの60代女性。36歳の頃に乳がんを罹患し、その後、複数回の転移を経験して、2020年に人工膀胱を造設。医薬品販売の会社に勤務。公益社団法人 日本オストミー協会 東京支部に在籍。

仕事帰りに受診したら、そのまま入院。その日から絶食絶飲に。

 Mさんは、がんの転移を複数回経験されたそうですが、最初のがんを罹患してからこれまでの経緯を教えていただけますか?

Mさん:最初のがんは乳がんで、25年以上ぐらい前になります。自覚症状は全くなかったのですが、自分で胸を触った時になんとなくしこりがあるのを感じて発覚しました。部分切除をしたあとに、放射線治療とホルモン剤治療を受けて、再発はせず、ひと区切りになりました。その後、膵臓にも良性の腫瘍がみつかりましたが、手術はせず経過観察で病院通いを続けていました。

そこから15年ほどの時が流れて、2014年の春。1か月ぐらいずっと微熱が下がらないことがあり、仕事帰りに職場近くのクリニックを受診しました。先生から、「念の為、血液検査をしておきましょう」と言われて、その日は採血をして抗生物質をいただいて帰ったのですが、抗生物質が効いたのか具合が良くなり、何もなかったのだろうと血液検査の結果を聞くために再受診したところ、CRPの数値が高くなっていました。下腹部も右が左に比べてなんとなく腫れていると先生が仰って、念の為、そのまま別の病院を受診することになりました。

CTを受けたのですが、出てくるなり先生が深刻な顔で、私の顔を見て「このまま入院してください」と。いきなりで「え?」って感じですよね。虫垂にがんが見つかり、先生から「今日から絶飲絶食です」と告げられました。

私としては大したことないだろうと思っていましたし、会社帰りで家族も家で待っているので、「入院はできません」と言ったのですが、思い叶わず、その日から水を一滴も飲まない点滴だけの入院生活が始まりました。

泊まる準備がなかったので、急いで友人に電話して、スリッパとか携帯の充電コードとか身の回りのものを買ってきてもらいました。入院して10日後ぐらいに手術を受けて、その後、抗がん剤治療を受けました。

抗がん剤の副作用で感覚障害に。いろんなものが寒さで痛かった

 抗がん剤治療の副作用で困ったこと、またそれに対して生活で工夫したことがあれば教えてください。

Mさん:一番は、感覚障害に悩まされました。触ると、いろんなものがとにかく冷たくて。特に、冬は朝、化粧水をつけるのに事前に化粧水を温めておかないといけないくらいですし、本当に寒くて痛かったです。家の中でも手袋は何重にもしていましたし、ストッキングを履いたその上からさらにタイツを履いて過ごしていました。

 毛が抜けたりとかはなかったですか?

Mさん:毛が抜けたのは、その次のがんの時ですね。約7か月後に卵巣に転移していることが分かって手術を受けたのですが、抗がん剤の種類が変わったら、1か月くらいでごっそり抜けました。最初は驚きましたが、カツラの生活も慣れてしまえばこんなものかという感じで、ストレスもそこまでなく普通に仕事もしていました。

あとは、口内炎ですね。痛くてしゃべれないくらいの口内炎が出来て、会議の時とかは困りました。それに、吐き気も少し。振り返ってみると、副作用が大変は大変だったのですが、仕事が忙しかったおかげで、悩みこんでしまう余裕がなくてよかった気がします。

 人工膀胱になったのは卵巣の摘出手術が、きっかけだったのですか?

Mさん:いえ。人工膀胱になったのは、まだその先です。次に子宮にも転移が見つかり、子宮を取りました。次に転移した時の選択肢が狭まってしまうということで、抗がん剤を中止することになり、先生から「僕のとこに戻ってくるときは、もう覚悟もしなきゃいけないね」とお話ししていただいた時は、本当にショックでしたね。たくさん泣きました。

子宮を取ってから、2年後くらいに膀胱に転移が見つかって、切除するには神経も一緒に取らないといけないというので人工膀胱になりました。2020年のことです。

人工膀胱での生活。尿が漏れないか、慣れるまでは不安だった

人工膀胱での生活について教えてください。

Mさん:尿というのは身体の中で、24時間フル稼働で作られています。人工膀胱の場合、尿がある程度溜まると意識とは無関係に排泄されるものなので、基本的には常にパウチをぶら下げての生活になります。液体なので、ちょっとでもパウチの貼り方がまずいとじわじわ漏れてきてしまいますが、綺麗に貼るには、ある程度慣れが必要で、最初のうちは、外出がとても不安でした。

2、3時間分くらいはそのまま溜めておけますが、その分重さを感じて不安になってくるので、私は気づいたタイミングでトイレに行くようにしています。だいたい、1時間半に1回くらいのペースですかね。尿の出し方自体は、出口のコックをひねるだけの簡単な作業です。パウチの交換の頻度は、私はだいたい4日に1回くらいのペースで取り替えています。夏は汗をかいたりするので、もう少し多いかもしれません。

夜、寝るときはどうしているのでしょうか?

Mさん:寝ている間は、ある程度、尿を溜められる採尿バッグをパウチに繋げて、それをベッドの脇にぶら下げて寝ています。入院している方がしているような感じですね。

お風呂は、どのように入るのですか?

Mさん:パウチは付けたままで、そのまま湯船につかれます。

はたから見て、パウチを付けていると気づかれるものですか?

Mさん:普通にしていたらまず気づかれないと思います。もちろん、すごくタイトな洋服を着たらシルエットで分かりますし、尿が溜まってくると片側だけお腹が出ている感じにはなりますが、よく観察しない限りは、気づかれないと思いますね。

― Mさんが日本オストミー協会に入会したきっかけを教えてください。

Mさん:情報収集したかったのが、きっかけです。がん治療自体が非日常的な話題ですし、まして排泄の相談は、当事者同士じゃないとなかなかできないですよね。他の人がどう工夫しているのかが全く分からなかったときに、日本オストミー協会というオストメイトの集まりがあるのを知って、入会しました。

参加されている方の話を聞いていると、やっぱり皆さん、尿が漏れないようにするにはどうすればいいか、というのがよく話題に上がります。あとは、温泉とか外でお風呂に入るときに、どうするか。

肌色の大きなシールみたいのが売っていて、それを貼って入浴したりするのですが、結局、それもちゃんと準備しないと上手く貼れなかったり、その手間も大変だったりとかして。皆さん、いろんなものや方法を試行錯誤されているそうです。もし同じように悩みを抱えている方は、この協会に参加すると解決策が見つかるかもしれませんよ。

公益社団法人 日本オストミー協会
オストメイト(人工肛門・人工膀胱保有者)が安心して暮らせる社会を目指しているオストメイトによるオストメイトのための障害者団体

※この記事はご本人から許可をいただき掲載しています。内容については個人の体験を元に構成したものであり、治療等の条件はすべての方に当てはまるわけではありませんし、治療方針については 当社が推奨するものでもありません。ご自身の主治医とよく話し合い、最善の治療を選択してください。

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