Profile
2018年にステージIの直腸がんが見つかり、切除術を受け、一時的ストーマ造設。その後、肺転移、局所再発を経て2021年に永久ストーマ造設。がん罹患後も継続してフルタイム勤務し、余暇の時間は「カロリーナ」としてYouTubeで治療の体験談や旅の動画を発信中。2023年5月より、大腸がん・消化器がん女性のためのSNSコミュニティ「ピアリング・ブルー」代表。
- 病名
- 直腸がんステージI
- 状況
- 2018年にステージIの直腸がんが見つかり、切除術を受け、一時的ストーマ造設。その後、肺転移、局所再発を経て2021年に永久ストーマ造設。
健康診断にて、直腸にがんが見つかる
大腸がんが見つかってから手術を受けるまでの経緯を教えてください。
佐々木さん:会社で年に一回受ける健康診断を受けた時に、便潜血が確認され、「要精密検査」という結果が戻ってきて。それで、クリニックで大腸内視鏡検査を受けたところ、直腸にがんが見つかったという感じです。私ががんになるなんて、1mmも思ったことがなかったので、「まさか」という感じでした。
でも、振り返ってみると前兆みたいなものは確かにあったんです。検査を受ける半年ぐらい前から、便意があっても出なくて、お尻を拭いてみると血のようなものがトイレットペーパーにつくという現象が続いていました。ただ、婦人科のおりもののようにも見えて、どこも痛くもないので放っておいたんです。 なので、がんだと分かったときには、「これが原因だったのね」みたいな感じでちょっと納得したというか。ステージ1だったというのもあり、精神的にショックだったというよりは、身体の不調の原因が分かってちょっとスッキリしたという感情でした。
治療を受けるにあたって、お仕事はどれくらいお休みされましたか?
佐々木さん:大腸がんは、基本的には手術の前日から入院されるケースが多いと思うのですが、私も前日から入院して、そこから約2週間入院をしました。仕事は主にデスクワークなのですが、大腸がんになってから在宅勤務を認めてもらったので、通勤をしなくて済むようになったぶん、身体にも負担がかからず、退院後はすぐに復帰できました。
お休みを取るにあたって、職場の方の理解を得るのに苦労はされましたか?
佐々木さん いえ。そこは、理解のある職場で助かりました。というのも上司のご家族ががんで、ずっと闘病をサポートしていらっしゃったり、同じ職場にも、抗がん剤治療をしながら闘病されている膵臓がんの先輩がいて、抗がん剤治療の日は早退して帰るような姿を日常で見ていたりしたので、がんになったことを言いづらいということもありませんでした。
がん治療の道のり。手術、抗がん剤、放射線治療を経て
手術の他に何か治療は受けられましたか?
佐々木さん:はい、抗がん剤治療と放射線治療も受けました。抗がん剤治療は、3週間おきに半年間ほど、1回に4、5時間かかるため、都度仕事を早退して、病院に通いました。
放射線治療は、1回10分と短い時間なのですが、毎日通わなければなりません。私の場合、電車での往復移動時間を含めて3時間はかかるので、午後半休を取りながら28日間通いました。ちょうど転職して1年目の年だったので、有給もたまっておらず、有給がなくなった後は減給というかたちで治療を続けました。
治療費は大体どれぐらいかかりましたか?
佐々木さん 正確には把握していないのですが、高額療養費制度で上限が約9万円を超える分について戻ってくるぶんを差し引いて、年間でざっと50万円くらいはかかっていると思います。
仕事復帰をしてから、治療の影響で何か生活に支障を感じたことはありますか?
佐々木さん:腹腔鏡手術で腫瘍を取り除いたので、傷跡が小さく、排泄は一時的ストーマで問題なくできていたのですが、3か月後にストーマを閉鎖する手術を受けてからは、排便障害に悩まされました。特に頻便といって、1日に何度もトイレに行かないといけなくなりましたし、便意を感じたらもう漏れているみたいなコントロールが難しい状態で。それで苦労している大腸がん仲間も多いんですよね。電車に乗っている途中でも構わず便意が来ますから、怖くて乗っていられない。パッドを当てたり、事前にどこにトイレがあるのか調べておいて、トイレのスケジュールを立ててから外出をしたりすることが必要になります。また、排便障害を理由に休職を余儀なくされる方もいらっしゃいます。私は幸いにして、在宅ワークを許可していただきました。働くがんサバイバーとしては、とても恵まれていると思います。
肺への転移の発覚。抗がん剤の副作用による倦怠感やしびれに悩まされる
その後、肺に転移が見つかったそうですが、その時のお話も教えていただけますか?
佐々木さん:はい。大腸がんが見つかってからは、3か月おきに定期検診があるのですが、何回か繰り返す中で肺の影が大きくなっていっているのが分かって。肺の場合は、確定診断するには、病変した組織を一部取り出して調べないと分からないのですが、この成長の度合いであればおそらくがんだろうっていうことで、手術を受けることにしました。
肺の転移が分かった時はとても精神的にまいってしまいました。肺まで転移してきているということは、血液で全身に巡っている可能性があるということですから。
また、術後の抗がん剤治療もきついんですよね。薬の粒が大きくて飲みづらいし、すごい倦怠感に襲われるし、手足もしびれるんです。薬を見るのも嫌になるぐらい辛かったです。点滴を入れる時の血管痛にも悩まされましたし、さらに私の場合は末梢神経に影響が出ていたので、冷たいものを触るだけでもビリビリと指先が本当に痛くて。
冷たい水とかも喉を通らないので、レストランに行ったとしても、白湯をお願いしていました。下痢で食欲も落ちている中で、でも錠剤を飲むために無理してご飯食べなきゃならない。という事が、半年間続くんですね。薬によって、味覚もおかしくなります。大腸がん仲間からは、「何を食べても砂をかじってるみたいだ」っていう声も聞いたことがありますけど、その症状は出なかったにしても、食べる楽しみが損なわれたのはしんどかったです。
肛門での排便を諦め、自ら永久ストーマ造設を希望した理由
佐々木さん:その後、永久ストーマに切り替えました。一時的ストーマを閉鎖してから、だんだんと肛門に痛みが出てきて悩んでいて。便が出そうなのに出ない”残便感”があって、いきんだときに力が変なところにかかるからか、徐々に状態は悪化していき、しまいには夜も眠れないくらいの状況になりました。
座っていられないぐらい痛くて、痛み止めも常に服用していて、「こんなに痛いのであれば、もう肛門ごと取り去ってくれー!」と思ったんですよね。
外出の時はパットが手放せず、食べたら出てしまうから食べるのが怖くなってと、人と会うのも億劫になるっていう感じで、その頃はメンタルまでやられていました。それで、主治医の先生に相談して永久ストーマの手術を受けることを決めました。
その時に、何度も手術を受けるのは嫌だからと、痛んでいた部位の手術も一緒に受けたところ、切除した部位が局所再発していたということが分かったんです。
普通だったら、「できる限り肛門で」と思う方が多いように思いますが、それだけ排便障害が辛かったということですね。
佐々木さん 今振り返ってみても、あの辛さを考えたら、永久ストーマの方が百倍いいと思います。ただ、ストーマもやっぱり面倒くさいですよ。 パウチ(袋)を貼り付けている皮膚が荒れて痛むこともありますし、お金もかかります。
パウチが1セット1,000円ぐらいするんですけど、1週間に2回交換するのと、パウチを剥がす”剥がし剤”とかも合わせて毎月1万円ぐらいはかかります。自治体から補助金も出るんですけど、横浜市の場合、市民税の納税額によっては補助が受けられず、全額実費になることもあります。
大腸がん経験者のコミュニティー「ピアリング・ブルー」の立ち上げ
昨年(2023年)、大腸がんなど消化器がんの女性向けのSNSコミュニティ「ピアリング・ブルー」を立ち上げたそうですね。
佐々木さん:はい。もともとピアリングという乳がん・婦人科系のがんの方のコミュニティーがあるのは知っていて、「とても楽しそうなグループでいいな」と思っていたのですが、一方で、大腸がんの人の集まりは見つからなかったんですよ。
そんな中で、まずは自分の経験をYouTubeで発信してみようと始めてみたら、割と多くの方に見ていただけて。そこから腫瘍内科医でYouTubeをやられている押川先生と繋がったら、「自分の患者さんの中にもグループを欲している声がある」というお話を伺って。ピアリングのメンバーとはもともと仲が良くて、「大腸がんのグループも作りたいね」みたいな話をしていたので、その三者が一致してクラウドファンディングから誕生したというのが経緯になります。
大腸がんって今言ったような、排便の悩みなど、けっこう人に言えないネタが満載なのですが、打ち明けられる場が今までなくて。今は私だけじゃなくて、いろんな声が集まって、そこから交流が生まれてきていて、すごくいいですよ。同じ境遇の人に自分の話を聞いてもらえる、仲間がたくさんいるっていうのを実感してもらえています。
佐々木さんのYouTubeチャンネル「 カロリーナ Calorina」
https://www.youtube.com/@calorin
大腸がん、消化器がん女性の想いと経験を共有する支え合いSNSコミュニティ
「ピアリング・ブルー」
https://bleu.peer-ring.com
※この記事はご本人から許可をいただき掲載しています。内容については個人の体験を元に構成したものであり、治療等の条件はすべての方に当てはまるわけではありませんし、治療方針については 当社が推奨するものでもありません。ご自身の主治医とよく話し合い、最善の治療を選択してください。