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ブレストキャンサーポートレート代表
岸あさこさん
【体験談】トリプルネガティブ乳がん発覚からの軌跡 ~細胞レベルで幸せを感じるようになった4年間~(後編)

2022.02.04

Profile

岸あさこ
乳がん・女性患者の写真撮影|ブレストキャンサーポートレート代表
正看護師、衛生管理者、民間保険会社医学的アンダーライターなどを経て、オーストラリアの大学院へ留学。2017年起業のため帰国し福岡へ移り住んだが、乳がんが発覚、右胸の部分切除手術を受けた。治療中、2018年にゴーウィ株式会社を設立。医療にまつわる知識と自らの乳がん経験を生かし、乳がん手術前後の胸の写真撮影と心のケアを兼ね備えた「ブレストキャンサーポートレート」スタジオを都内で開設。
病名
乳がん(トリプルネガティブ)
状況
術後経過4年。2018年に部分切除手術。抗がん剤と放射線による治療後、観察中。

オーストラリア留学から帰国後、たまたま入浴中に胸のしこりを発見。珍しいタイプの乳がんと告知され、自暴自棄に…。支えになってくれた「がん友」や自身が立ち上げた乳がん専門写真スタジオの運営を通じて感じた「考え方を変える方法」を伺いました。

前編はこちら

経験から気が付いた「前向きに気持ちを変える方法」

乳がんの患者さんやご家族、経験者さんなどへの様々な支援やサポートが揃ってきているなか、私の経験から思うことは、ご本人がどうやって気持ちを前向きに変えていくかがとても重要だということです。

「どうして私ばかりが病気になったのか」と嘆く方も多くいらっしゃいます。「友人は健康で結婚して子供もいて幸せそうなのに…」と周りと比べてしまい、自分でどんどん暗い気持ちになってしまう。ですが、幸せそうに見えている人も外側からは見えないだけで何か問題を抱えているかもしれないですよね。

だから、辛い気持ちになってしまう原因は疾病というより、自分の心のあり方なのかなと思います。もう少し言うと「前向きな気持ちを持つ」ためには、誰かにお膳立てしてもらうのではなく、「自分で作ること」が大切だと私は思います。

例えば、先日、「手術で全摘出をするか部分切除をするか悩んでいます」との相談を受けました。その後、一度はご家族の勧めで全摘出を決めてしまったようですが、手術の前日に部分切除に切り替えてもらったとのメッセージをいただきました。自分の幸せとは何か、これからどのように生きていきたいかを改めて考え抜いた結果、ご自身が納得して判断されたのだと思います。

私が考えるウェルビーイングとは「細胞レベルで幸せを感じる」こと

人生100年時代の「健康」というのは「病気がない状態」ということではなく、「病気があっても幸せに過ごすことができ、生活が充実している」ということ。それが少しずつ世界共通の認識になってきている「ウェルビーイング(well-being)」という考え方です。

医療や福祉のお世話になったとしても、「自分は幸せで健康だ」と言える状況にすることが、人生100年時代を幸せに生きるうえで重要になってくると考えています。

しかし、乳がんに限らずですが病気になった患者さんご本人は、完治させるために受け入れ難い治療という難関を突破するために闘い続け、精神的に追い詰められてしまう人が後を絶ちません。

実際私もそうだったのでよくわかっているつもりですが、気持ちが沈んでいる状況だと幸せを感じることができません。やはり「病気を受け入れ、向き合うこと。そして何より全てのこと(目の前の一つ一つ)に感謝し、心が健康な状態で過ごすこと」が幸せを感じる上で重要なんだと思うようになりました。私が一番大切にしているのは「細胞レベルで幸せを感じる」ことができるということ。

自分の変化と心の向上に気づき、幸せと感じて過ごせていることが一番の「ウェルビーイング」だと思っています。私は4年経ってようやく、「細胞レベルで幸せを感じる」ことができるようになりました。

乳がんの告知以降の経験から学んだのは、自分の人生をどう組み立てていくかを常に自問自答するのが大切だということです。私の場合、乳がんが考えるきっかけとなりましたが、すべての人に共通することなのではと思います。

小さな「希望」が未来を紡ぐ

とにかく皆さんにお伝えしたいのは、「希望を持つ」というのがどれだけ生きがいにつながるかを知って欲しいということです。それは、ご家族も同じ、病気にかかわらずすべての人ができるシンプルなことですがとても重要だと実感しています。

これまでは、乳がん患者さんの写真を撮ってきましたが、これからはお医者さんの写真も撮っていきたいというのが今の私の「希望」です。いろいろな乳がん患者さんとお話をする中で、患者さんはお医者さんを「怖い」と感じてしまっているケースが少なくないんじゃないかと思うようになりました。ですが、もっと話しやすい関係性であるべきですよね。

その「怖い」というイメージを払拭させる写真を撮っていきたいと思っています。

小さなビジョンや希望を一つでも持つことで、少しずつでも前向きになれ、それがいつしか大きな力につながることがあるので、是非皆さんも「希望を持つ」ことを忘れずに、そして希望に向け動き出すことを意識して過ごしてみてください。

岸あさこ
  • 2021年12月現在の情報を元に作成
  • がんを経験された個人の方のお話をもとに構成しており、治療等の条件はすべての方に当てはまるわけではありません。

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