【もっと知りたい大腸がんのこと】VOL.1 日本女性のがん死亡数1位、罹患数2位。専門医に大腸がんの早期発見法を聞きました 

2026.04.14

日本女性のがんの中で、大腸がんは死亡数1位。罹患数は乳がんに次ぐ2位です。罹患数が増え始めるのは40代からと更年期以降の世代には気になるがんです。大腸がんの早期発見法、予防法について、乳がんを経験した医療ジャーナリストの増田美加が詳しくお伝えします。その第1回は、大腸のスペシャリストであるがん研有明病院 下部消化管内科の千野晶子先生にお話を伺いました。 

お話を伺ったのは… 

千野晶子(ちのあきこ)先生
がん研有明病院 下部消化管内科 副部長 

東邦大学医学部卒業後、昭和大学藤が丘病院にて臨床研修後に消化器内科へ入局。のちに旧癌研究会附属癌研病院へ所属。米国ミシガン州立大学救急病院での臨床研究を経て、現在のがん研究会有明病院の医長から現職へ就任。所属学会は日本消化器病学会、日本消化器内視鏡学会、日本内科学会、日本遺伝性腫瘍学会、日本がん治療学会、日本大腸検査学会、日本大腸肛門病学会に所属し、評議員および和文編集員等を兼務。大腸のスペシャリスト。 

取材・執筆/増田美加(女性医療ジャーナリスト)

なぜ大腸がんが日本女性の死亡1位なの? 

日本女性の大腸がんの罹患率は、乳がんに次いで2位です。女性では40歳から罹患率が上がり、50代で10.2%、60代で25.8%となり、その後90代まで罹患率は上がり続けます。いまや、女性の12人に1人が大腸がんにかかる時代です*1。 

また、大腸がんは死亡率が高いのも問題で、女性のがん死亡の第1位で、毎年大腸がんで約2万5千人の方が亡くなっています*2。大腸がんの罹患率、死亡率がともに高い理由は、どんなところにあるのでしょうか? 

「死亡率が高い理由は、このあとお話しますが、まずは日本女性の大腸がんの罹患率の高さに注目してください(表1)。こんなに罹患率が高いのに、女性の大腸がん検診の受診率は低いのです(表2)」 と千野晶子先生。 

乳がん、子宮がん、肺がんなどのがん検診と比べても、大腸がんの検診受診率は胃がんに次いで低く、男性が約49%に対して、女性は約42%の受診率しかありません*3(下記グラフ参照)。 

*1 がん情報サービス 最新がん統計 累積がん罹患リスク(2021年データに基づく) 
*2 がん情報サービス 最新がん統計 部位別がん死亡数2024年 

【大腸がんの年齢別罹患率】 

大腸がんは40歳から増え始め、50歳から90代まで増え続けます。50代では10人に1人、60代~70代の人では25~30%が大腸がんに罹患する確率です。全年齢では男性は10人に1人、女性は12人に1人が大腸がんにかかっています。40歳を過ぎたら大腸がん検診を年1回受けることはとても大切です。 

表1 

国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」(全国がん罹患モニタリング集計(MCIJ))より作成  

https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/dl/(2021年3月アクセス)

【女性のがん検診受診率の推移 2013年~2022年】 

大腸がん検診の受診率は、胃がんに次いで少なくなっています。胃がんは近年、罹患数も死亡数も減ってきていますが、大腸がんは罹患数も死亡数もともに増えているので、検診を受けることはとても重要です。 

表2 

「この大腸がん検診の受診率が低いことが、死亡率が増えていることに、影響しているのかもしれません。また、大腸がんの死亡率が高いのは、悪性度(がん細胞の増殖速度や転移・再発のしやすさを表す医学的な指標)が高くて治しにくいの? と思うかもしれませんが、そんなことはありません。内視鏡治療や外科手術で取りきれることも多いですし、治療の選択肢も増え、抗がん剤でも治りやすいのです。 

大腸がんは早期に見つければ、治しやすいがんなのです。けれども大腸がん検診は、忙しい、わずらわしい、自覚症状がない、生理中と重なる、話題にならないからなどの理由から後回しにされています。死亡率が下がらない要因はそこにもあるのでは、と考えられています。大腸がんは検診を受けてもらえれば、見つけやすい、治しやすいがんなのです」(千野先生) 

【女性のがんの部位別死亡数】 

大腸がんで毎年、日本人女性の2万5千人以上の人が亡くなっています。これは乳がんよりも多い人数です。 

出典:国立がん研究センターがん情報サービス2024年 

大腸がん検診はまず「便潜血検査」から 

大腸がん検診で早期発見することが大切ということですが、どんな検診を受ければよいのでしょうか? 

「症状がなくリスクも少ない人は、便潜血検査(いわゆる検便)です。日本で国が推奨するのは40歳以上、年1回の便潜血検査による大腸がん検診です。エビデンスレベルも推奨度も最も高くなっていて、市区町村単位で実施されています*3。便潜血検査は、2日(2回)取って提出することで精度(的中率)が80%以上と高くなります。 

この便潜血検査で1回でも陽性なら、精密検査の対象(適応)となります。ですから検便の再検査などで安心してはいけません。2回とも陽性の場合は、なんらかの大腸の疾患が隠れている可能性がより高くなりますので、必ず精密検査を受けることを強くお勧めします。 

 便潜血検査で、精密検査を受けるように(要精密検査)と結果が出たにもかかわらず、精密検査を受ける人は67%しかいません。乳がんでは精密検査の受診率は86%です。 

精密検査未受診の人が大腸がんで亡くなるリスクは、精密検査を受けた人に比べると、4.8倍にもなります。大腸がん検診の目的は、精密検査となる対象(適応)を判断するふるいのようなものなのです。陽性と判定された場合には、精密検査までしっかり受けるべきですね」(千野先生) 

*3「有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン」2005年 

 このように、大腸がん検診(便潜血検査)で陽性と結果が出ても、精密検査を受けない人がいることも問題となっています。 

「大腸がん検診で発見される大腸がんは、約3%と言われていますが、全国集計では検診受診者のうち約6%が陽性となります。陽性となった人のうち、精密検査の受診率は,約2〜7割と各都道府県によって受診率に大きな差があることも問題となっていて、各施設での啓蒙や組織づくりの重要性が見直されています。 

ところで、検診とは無症状の人が受けるもので、症状がある人(血便、排便習慣の変化、原因不明の貧血、便の太さが細いなど)は、直接専門病院やクリニックを受診して保険診療での精密検査を相談されることをお勧めします」(千野先生) 

大腸がん検診で要精密検査となった人は,どのような検査を受けるのでしょうか? 

「大腸内視鏡検査が第1選択となります。どうしても内視鏡検査を受けたくない人は、現在、大腸CT(3DCT)も容認されています」(千野先生) 

大腸がんになりやすいのは、どんな人?  

大腸がんのリスクがある人とは、どんな人なのでしょうか? 

「大腸がんになりやすい要因には、後天的要因と遺伝的要因が関係しています。まず、後天的要因では、50歳~90歳が発症しやすい年齢で、さらに環境的要因が加わることでリスクが高まります。慢性便秘、運動不足、糖尿病、喫煙、飲酒、腸内環境(腸内細菌叢が不良)、炎症性腸疾患、免疫疾患があると大腸ポリープができる可能性が高く、ポリープの一部ががん化するリスクも高まります。 

もうひとつの遺伝的要因については、全ての大腸がんの30%に関係すると推測されています。その中で、原因となる遺伝子が解明されている人は5%程度ですが、血縁者に大腸がんが多い場合には、なんらかの遺伝的リスクがある可能性があります(解明されていないことも多いです)。遺伝的要因があってもなくても、後天的要因は関係してきますので、生活習慣での予防に気をつけることも重要です。 

しかし、生活習慣だけでリスクを予測するのは不確かですし、50歳以上の人は一生に一度は大腸内視鏡検査を行なって、自分の大腸の状態やリスクを確認しておいてもよいと思います。一度、大腸内視鏡検査を行なって、医師からリスクが低いと判断された人は、大腸がん検診(便潜血検査)の継続というスタートラインに戻ることができます」(千野先生)

【大腸がんに関連する要因】 

遺伝的な要因以外にも、さまざまな環境要因と加齢で、大腸がんのリスクは高くなります。図のような食べ物や運動不足は特に大腸がんに関係するとされています。また、糖尿病の方も大腸がんのリスクが高くなることがわかっています。多くの糖尿病は生活習慣を見直すことで予防が可能です。大腸がんのリスクを下げるために、自分で取り組めることはたくさんあります。

大腸がんを予防する方法はあるの?

大腸がんのリスクを見ると、食事や運動などである程度大腸がんを予防できそうですが、確かな大腸がんの予防法はあるのでしょうか? 

「残念ながら、大腸がんを予防できる確実な方法はありません。けれども、規則正しい食生活、適度な運動、排便習慣を整える(便秘をしない)、肥満防止、禁煙、アルコールを飲みすぎない、糖尿病に気をつけるなどはリスクを下げることに繋がります。また、先ほどもお話したように、大腸がんには遺伝性のものがありますので、血縁者に大腸がんの方がいたら早めに大腸内視鏡検査を受けることをお勧めします」(千野先生) 

大腸内視鏡検査を受けたがらない人も少なくありません。どうして受けたくないのかを聞いてみると、「便潜血は、痔や排便時にいきんだことが原因なのではと自己判断する」「周囲の人の大腸内視鏡へのネガティブな発言でいやになる」「便潜血を再検査したら陰性だったから」「大腸内視鏡検査への医療に対する不信感」「家事優先となり検査時間の調整がしにくい」「お尻を見せることへの抵抗感」「自営業の女性で大腸内視鏡などの話題に乏しい」などの声があると、千野先生は言います。 

大腸がん初期の自覚症状は何? 痔と大腸がんの見極めは? 

検診は症状がない人が受けるもので、症状がある人は、病院を受診することが大事です。大腸がんの初期で気づける自覚症状には、どんなものがあるのでしょうか? 

「大腸がんの早期は無症状です。症状が出たときは進行していることが多いのです。ですから症状がないときの検診が大事です。 

初期症状で比較的多いのは、血便、排便習慣の変化(急に便秘になったり、下痢になったり)、便が細くなる、水っぽい便、残便感、体重減少、貧血などです。血便は、便に粘液様の血液がついていたりします。 

便に血がついていると痔と思いがちですが、そうではなく、痔は血液だけが散らばることが多くなります。それに、痔がきっかけで大腸がんが見つかることもあるので、自己判断せず、出血があれば大腸内視鏡検査を行ってください。 

もしも血便があったときは、大腸がんかどうかの診断をすることが大切です。受診するのは、胃腸科か消化器科で大腸内視鏡検査ができるところです。大腸全体を診る必要がありますが、肛門科は肛門周辺しか見ないこともあるので前もって確認する必要があります。病院選びは、ホームページなどで大腸内視鏡検査数が多く、大腸がんの情報を熱心に掲載している施設がいいでしょう」(千野先生) 

最近では、恥ずかしくない、受けやすい大腸内視鏡検査を目ざした取り組みとして、女性医師を指名できたり、土日に行っている医療機関も出てきました。ホームページで探してみましょう。お尻を見せるのが恥ずかしいという声もありましたが、お尻に小さい切れ目がある検査用パンツを履くので、お尻を見せることはありません。 

次回は、早期発見、予防のために、受けるべき大腸内視鏡の詳しい情報を引き続き、千野晶子先生にお聞きします。検査前の食事制限、下剤、寝ている間にできる検査や検査時間、検査費用、もしもポリープがあったらどうするか、についても紹介します。

医療ジャーナリスト増田美加

取材・執筆/増田美加(女性医療ジャーナリスト)  

当事者視点に立った女性のヘルスケアや医療情報について執筆、講演を行う。 

乳がんサバイバーでもあり、がんやがん検診の啓発活動を行う。 

NPO法人「乳がん画像診断ネットワーク(BCIN)」副理事長。NPO法人「女性医療ネットワーク」理事。認定NPO法人「キャンサーネットジャパン(CNJ)」乳がん体験者コーディネーター。NPO法人「日本医学ジャーナリスト協会」会員。 

増田美加オフィシャルサイト
http://office-mikamasuda.com/

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