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【2024年7月開催】乳がんのサブタイプ別の再発率は?再発時の治療方針は? 大野真司先生講演レポート

2025.02.20

2024年7月に、がん経験者専用がん保険を販売するMICIN(マイシン)少額短期保険株式会社がオンラインセミナーを開催。社会医療法人 博愛会相良病院 院長の大野真司先生をお招きして、乳がんのタイプ別の治療法などについて最新のデータをもとに講演いただきました。参加者から事前にいただいた質問も含め、抜粋してレポートします。

乳がんの再発のリスクについて

Q. ステージ0で再発することはありますか?実際のところ医学的の限界や見逃し、誤りなどもあるのではないでしょうか。

乳がんのステージ0というのは、がん細胞が乳管内に留まっていて浸潤していない状態を指します。そのため、再発する可能性は非常に低く、実際には再発率は1%程度と言われています。ただし、稀にごくわずかに浸潤している場合があり、そうしたケースでは再発のリスクが少し高まります。 

医学的にも見逃しや誤りが完全に排除されるわけではないため、心配される気持ちも理解できますが、ステージ0での再発は極めて稀です。 

Q. サブタイプ別の5年、10年の再発転移率を教えて下さい。 

サブタイプごとにも再発転移率は異なります。ER+/HER2-(ホルモン受容体陽性/HER2陰性)のタイプは比較的再発リスクが低く、5年以内の再発転移率は低く抑えられています。対照的に、ER-/HER2+ (ホルモン受容体陰性/HER2陽性)やトリプルネガティブ(ER-/HER2-=ホルモン受容体陰性/HER2陰性)は再発リスクが高く、特に最初の5年間で再発リスクが高いことが示されています。ただし、10年経過する頃には、いずれのサブタイプでも再発リスクはかなり低下していることが確認できます。 

過去約30年間で乳がんの治療薬は約40種類に増加しました。ホルモン療法薬、抗がん薬、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬、抗体薬物複合体のいずれも増加しており、乳がん治療の選択肢が広がりました。 

ただし、全ての薬を使用するわけではありません。どの薬が最適か、どの薬が最も効果的かを決定するためには、ホルモン受容体やHER2、悪性度、増殖活性など、さまざまな因子を考慮する必要があります。  

新薬の登場によって生存率がどのように変化したのか、イギリスで1993年から2015年にかけての約50万人の乳がん患者の死亡率について、手術後すぐを基準にして20年間にわたる死亡率が追跡されています。1993年の5年後の死亡率が15%だったのに対し、2010年には約5%まで低下しています。この大幅な改善は、早期発見の普及と薬物療法の進歩によるものです。今後もさらに死亡率が低下することが期待されています。 

HER2陽性乳がんの再発後の生存率は2008年から2017年のデータを見ると、再発後に半数の患者が亡くなるまでの期間が、過去には約3年半だったのが、最近では5年を経過しても半数以上の患者が生存していることが示されています。これは、HER2陽性乳がんの治療が進歩したためです。 

ただし、トリプルネガティブ乳がんのように、依然として生存率の大幅な改善が見られないタイプもあります。まだ画期的な薬が開発されていないのが現状です。しかしながら、今後さらに生存率の改善が期待されています。新しい治療法の開発と導入が進むことで、これまで大きな改善が見られなかったタイプの乳がんに対しても有効な治療が可能になるでしょう。 

ホルモン療法について 

ホルモン療法の期間は基本的に5年です。5年以降の再発リスクが高いと予測した場合は10年継続となりますが、低い場合は5年で終了します。こちらを踏まえ、ホルモン療法の期間についての質問にお答えします。 

Q. アナストロゾールは平均何年ぐらい飲み続けるのでしょうか?再発が心配な理由により、10年以上飲み続けることは可能ですか? 

標準的な投与期間はステージ2以上であれば10年です。10年以上の投与に関しては、現在のところ世界的な標準治療としては確立されていません。 

10年間再発していない場合、その後の再発リスクは著しく低下します。また、長期投与による副作用も懸念されるため、副作用と効果のバランスを踏まえると、行うものではないと考えられます。

Q. 5年間が内服と言われていますが、延長したほうが再発リスクは下がりますか?5年再服用で再発率は100%ないとは言いきれないと思うので、やはりホルモン剤の延長はした方が良いのでしょうか?

ステージ1の乳がんであれば、ホルモン療法の延長は必ずしも必要ではありません。医師が5年で終了を勧めた場合、それは再発リスクが低いと判断されたことを意味します。ステージ2の場合、10年間のホルモン療法が再発リスクを減少させる可能性があり、より安心できる選択肢かもしれませんが、医師が5年と判断した場合は、その判断に従うことが適切でしょう。 

Q. ホルモン療法を10年続けると、5年と比較して再発率はどの程度下がるのでしょうか? 

10年間ホルモン療法を続けることで、再発率は約20%減少するとされています。5人が再発するリスクがある場合に4人に減るイメージです。 

Q. 妊活を目的にホルモン療法を中断したいです。ポジティブ試験では短期間の再発リスクへの影響はないとの結果だったそうですが、中長期の影響はいつ頃出てきますでしょうか。 

ルミナールタイプの乳がん患者さんが手術後にホルモン療法を開始し、2年間服用した後に中断して妊活に入る場合、短期間の再発リスクや妊娠に伴うリスク(流産や奇形など)に大きな影響はないとされています。このため、出産後にホルモン療法を再開することが推奨されます。 

Q. 3年前にステージ0(非浸潤がん)で全摘しました。自分で決めたことですがホルモン療法はしなくて良かったのか気になることがあります。 

ホルモン療法は、ステージ0でも使われることがありますが、その主な目的は、逆側の乳房に新しい乳がんが発生するリスクを下げることや、温存した乳房への再発を防ぐことです。全摘手術を受けられた場合、ホルモン療法は再発防止という観点では不要です。 

ただし、逆側の乳房に新しい乳がんが発生するリスクを考慮するかどうかで決めることになりますので、担当医と相談しながら決めたことであれば、ホルモン療法をしなかった選択が適切であったと思います。 

乳がんの再発治療について 

Q. 乳がんは完治しますか? 

乳がんの完治については、以前は再発すると治ることはないと言われていましたが、近年は医療の進歩により、状況が大きく変わってきています。新しい薬が次々と開発され、再発した患者さんの約半数が5年以上生存することができています。このような進展を踏まえると、今後さらに治療法が進化し、完治が可能になる日が来ると考えられます。医療技術の進化に期待が持てる状況です。 

Q. オリゴメタ乳がんは、全身治療の後に局所治療することで寛解になる場合があると聞きました。愛知県在住なのですが、どこの病院で対応していますか? 

オリゴメタ乳がんは、再発したものの中で転移が4個以下のものを指します。現在、オリゴメタ乳がんが完治するかどうかは研究段階にあり、どのような条件で治癒が期待できるのかについてはまだ明確な答えは出ていません。この研究には約5年ほどかかると見られていますが、愛知県がんセンターでは臨床試験が行われており、参加することが可能です。その他の施設でも対応が可能な場合があるため、主治医に相談してみることをお勧めします。 

進行・再発乳がんの治療 

トリプルネガティブ 

トリプルネガティブ乳がん(ホルモン受容体陰性、HER2陰性)の進行・再発乳がんに対する治療の流れを示しています。サシツズマブ ゴビテカンは2024年に保険承認が予定されています(編注:2024年9月に承認済み)。このように、新たな薬が続々と登場しているため、予後の改善がますます進むでしょう。 

ホルモン受容体陽性HER2陰性 

ホルモン受容体陽性・HER2陰性の進行・再発乳がんに対しては、ホルモン療法が基本となりますが、個別の状況に応じて異なる薬剤が使用されます。10年前は存在しなかった薬剤が多くあることから、乳がん治療は着々と進歩しており、今後も多くの薬が開発されることでしょう。 

まとめ

今回は、先生のご知見を踏まえて、乳がんの検査や治療、再発について、参加者のご質問にお答えいただきました。さまざまな場面で役立てていただければと思います。 

※掲載された情報は、公開当時の知見によるもので、現状と異なる場合があります。また、治療等の条件はすべての方に当てはまるわけではありませんし、治療方針については当社が推奨するものでもありません。ご自身の主治医とよく話し合い、最善の治療を選択してください。 

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