がん治療中の住宅ローンはどうなる?治療中に確認したい団信と支援策

2026.03.19

がんの告知を受けて真っ先に考えるのは身体のこと、そして治療や家族、仕事のことでしょう。 
でも少し落ち着くと、心の片隅に浮かぶのが、「住宅ローン、大丈夫かな」という不安です。 
「まだ返済が20年ある」「団信ってどうなってるんだっけ?」そんな声をよく聞きます。 
今回は、がん治療と住宅ローンについての、確認しておきたいことを整理します。 

まずは団信の確認から

住宅ローンを組むときに、ほとんどの人が加入しているのが、団信(だんしん)=団体信用生命保険です。 

これは、契約者が死亡・高度障害になった場合に、残りのローンを保険で完済してくれる仕組みです。もしもの時には、ローンがなくなって住宅が残るので、のこされた家族にとっては安心につながります。 

最近はさらに、がんの保障があるがん団信や、がんだけではなく脳卒中・急性心筋梗塞などに対応する三大疾病保障特約付きの団信、仕事をすることができないなど、所定の就業不能状態を保障する就業不能保障付き、なども登場しています。 

これらは、ローンを返済している本人にとっても安心な保障です。 

ですから、まず確認するのは、そもそも団信に入っているのか、ということ。 

そして、団信に入っていたら、保障されるのはどんな場合にいくらなのか、を調べましょう。 

さらに、がん団信において、もっとも注意しなければならないのが「免責期間(待機期間)」の存在です。がん団信は、契約直後からすぐに保障が受けられるわけではなく、免責期間という待期期間が設けられていることが一般的です。多くの場合、契約から90日以内にがんと診断された場合は、保障の対象外になります。 

また、治癒の見込みが高いとされる上皮内がん(上皮内新生物)など、一部のがんが保障の対象外になる場合があります。 

保障される金額ですが、診断確定でローン残高がゼロになるタイプや、半額になるタイプがあります。とても重要なことですので、しっかり確認してください。 

保障内容の確認は、ローン契約書や、団体信用生命保険証書といった正確な書類で行いましょう。 

なぜなら、団信は契約時期によって内容が違うことが少なくないからです。 

たとえば、保障の対象になるがんの種類です。上皮内新生物や悪性黒色腫以外の皮膚がん、非浸潤がんなどは、契約時期によって対象になっている場合もあれば、そうではない場合もあります。 

また、がんと診断されたら給付が受けられるのか、それとも、診断されて治療のための入院、手術が給付の条件になっているか、そういったことも要チェックです。 

契約する時に説明は受けているはずでも、時間がたてば細かいところの記憶はあいまいになっていることも多いですよね。 

そんな時だからこそ、契約書や証券での確認が必要です。 

小さい字ばかりの書類は読みにくいかもしれませんが、インターネット検索のみですませるのはお勧めできません。 

ローンを組んだ金融機関のホームページで調べても、そこにあるのはこれから加入する人向けの説明がほとんどです。実際に入っている団信とは保障内容が異なっているケースもあるので要注意です。 

がんの治療で医療費がかかり、収入が少なくなってくると、住宅ローンの返済は重い負担です。団信で住宅ローンの負担を減らせることがわかったら、早めに手続きを進めましょう。 

金融機関に駆け込む前に整理しておいたほうがいいこと 

団信の保障が受けられない場合、あるいは、受けられてもなおローン返済が厳しい場合には、多くの人が住宅ローンを組んだ金融機関に相談しようと思うのではないでしょうか。 

しかし、実際に金融機関に問い合わせる前に、考えておきたいことがあります。 

金融機関で相談できるのは、支払い方法の変更です。 

たとえば、次のようなものです。 

・返済期間の延長:毎月の支払額を減らして、返済期間を延長します。 

・一定期間の返済額を軽減:一定期間のみ返済額を軽減して、その後の返済額と期間は増えます。 

・ボーナス払いの変更:ボーナス返済月の変更や、ボーナス返済の取りやめです。 

つまり、ローンは返済する前提での相談になります。 

治療の予定や、体調、仕事の内容など総合的に考えて、支払いが厳しいのはここ数か月で、そのあとは支払い続けられることが見込まれる、といった場合には、その見込みを説明できるよう整理しておくといいでしょう。 

ただし、これらの変更は金融機関の審査が必要ですので、結果が出るまでの数か月間は従来どおりの支払いが必要です。 

また、変更の手数料や、半年間、もしくは1年間の支払い猶予の審査が通った場合でも、利息の支払いは続くことにも注意してください。 

支払方法の変更以外に検討できること 

がんの三大治療、手術・放射線治療・抗がん剤治療(化学療法)のうち、長期になりがちなのが抗がん剤治療です。 

高額な薬も多く、治療期間が長いと、体調と家計どちらも負担にさらされることになります。 

もし、主治医から治療が1年以上続くと説明されている場合には、体力の回復にも時間がかかることを想定して、より幅広い選択肢を検討できるようにしておきたいところです。 

支払い方法変更以外にできることは、次のようなことがあります。 

・自宅を担保に資金を借り、利息のみ払う(リバースモーゲージ) 

・売却してそのまま賃貸で住む(リースバック) 

・売却してほかのところ(実家など)に住む 

・賃貸に出してローンにあて、ほかのところ(実家など)に住む 

・マイホーム借り上げ制度を利用する 

大切なのは、早めに情報を集め、整理してから動くこと。 

支払いが滞って督促状が届くようになってからでは、検討できる選択肢は限られます。 

治療と住宅を守るための二重の支え 

住宅ローンそのものを直接的に助けてくれる制度は、決して多くありません。 

しかし実際には、収入減に対する公的支援と、金融機関との調整の2つを組み合わせることで、家計全体として住宅を守ることが可能になるケースがあります。 

まず考えたいのが、治療による収入減を補う公的制度です。 

代表的なものが、会社員や公務員が利用できる傷病手当金です。給与のおおよそ3分の2が、最長1年6か月支給されるため、働けない期間の生活費を支える重要な制度です。 

また、治療の影響で長期間働けない、あるいは就労が難しくなった場合には、障害年金の対象になることもあります。障害年金は、必ずしも「寝たきり」でなければ受け取れない制度ではありません。 

一方で、住宅ローンについては、金融機関ごとの支援制度を確認します。 フラット35を利用している場合には、疾病や収入減を理由とした返済特例制度があります。 民間銀行でも、一定期間の返済額軽減や猶予措置を用意しているケースもあります。 

重要なのは、どれかひとつで解決しようとするのではなく、組み合わせて考えることです。 収入を下支えしながら、ローン返済の負担を調整することで、無理のない形で治療に専念できる環境を整えやすくなります。 

治療中の住まいの安心を守るには 

住宅は、生活の基盤であり、同時に心のよりどころでもあります。 治療中に「この家を守れるだろうか」と考えること自体が、大きなストレスになることもあるでしょう。 

だからこそ大切なのは、 ローンを払い続けることそのものを目的にしないことです。 

本当の目的は、治療を受けながらこれまでの生活をできるだけ維持することにあります。 

団信の内容を確認すること。 収入が減った場合の制度を知ること。 金融機関に相談する前に、自分の状況を整理しておくこと。 

こうしたひとつひとつの行動は小さく見えても、住まいの安心を守るための確かな一歩です。 

住宅ローンの問題は、医療の場ではなかなか相談しづらいテーマです。 

しかし、誰かに話し、情報を整理することで、思っていたより選択肢があると感じられることも少なくありません。 

FP(ファイナンシャル・プランナー)に相談することもそのひとつです。 

治療と生活は切り離せないものです。 住まいを守る視点を持つことは、治療を続ける力を支えることにもつながります。 

まとめ

まずは、団体信用生命保険=団信を確認。保障の対象になる条件を把握します。 

住宅ローンの支払いが厳しい場合には、金融機関で支払い方法の変更を相談できますが、実際に問合せをする前に、今後の見通し(治療期間や体調、仕事内容)を整理しておきましょう。 

支払い方法の変更以外にも検討できる方法はありますが、早めの情報収集が大切です。 

わたしたち「患者家計サポート協会」では、30分の無料相談も行っています。不安なことがあれば、ぜひ活用してみてください。 

執筆 /松川 紀代(まつかわ きよ)

患者家計アドバイザー®AFP、2級ファイナンシャルプランニング技能士

メディカルFPサービス代表、一般社団法人患者家計サポート協会

2011年に乳がんが見つかり治療。がんの治療とお金に悩んだ経験から、2015年より患者支援を主軸としたファイナンシャル・プランナーとしての活動をスタート。

また、2016年からピアサポーターとしても活動をしている(日本癌治療学会認定がん医療ネットワークシニアナビゲーター)。FPとピアサポーターの視点を生かした患者支援を目指し、執筆、相談を中心に活動。

一般社団法人患者家計サポート協会のWEBサイトはこちら

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