保険証の種類は主に「社会保険」「国民健康保険」「後期高齢者医療制度」の3つがあり、保険料や保障内容が異なっています。
自分はどの種類の保険に加入しているのかを改めて確認し、万が一病気やケガをしたときにどのような保障を受けることができるのか、事前に把握しておくことが大切です。
この記事では、各保険証の違いや保障内容について詳しく解説しています。ぜひ、ご参考にしてみてください。
※本記事の内容は公開日時点の情報となります。
法令や情報などは更新されていることもありますので、最新情報を確かめていただくようお願いいたします。
そもそも保険証とは?
保険証とは公的医療保険制度の被保険者であることを証明する証明書です。ケガや病気で診療を受けるとき、医療機関の窓口で保険証を提示すれば、医療費を一部自己負担するだけで、必要な治療が受けられるようになります。
保険証の種類は大きく3つに分けられる
保険証の種類は主に「社会保険」「国民健康保険」「後期高齢者医療制度」の3つがあり、健康保険事業を運営している保険者によって異なります。
社会保険
社会保険は、会社員、公務員や教職員の方と、その扶養家族が加入する公的医療保険で、被用者保険とも言われます。社会保険は保険者の違い応じてさらに3種類に分けられます。
組合健保
組合管掌健康保険とも言われ、主に大企業に勤務する会社員とその扶養家族が加入します。[参考1]企業が単独、あるいは2つ以上の事業所または事業主が共同して設立が可能で、単独で設立をする場合は、被保険者が常時700人以上、共同で設立する場合は合計で常時3,000人以上いることが要件になります。[参考1]
参考1:厚生労働省「日本の医療保険制度について」 P6,P10
協会けんぽ
組合健保を設立していない中小企業の従業員を対象としており、保険者は全国健康保険協会です。[参考2]なお船員とその扶養者を対象とする船員保険も全国健康保険協会が保険者となっています。[参考3]
参考2:厚生労働省「日本の医療保険制度について」 P6
参考3:全国健康保険協会「船員保険事業」 P3
共済組合
公務員や教職員が加入できる制度です。共済組合は国家公務員を対象とした「国家公務員共済組合」、地方公務員を対象とした「地方公務員共済組合」、私立学校の職員を対象とした「私立学校教職員共済」に分類され、共済各法に基づいた運営が行われています。[参考4]
参考4:厚生労働省「共済組合について」P3
国民健康保険
主に自営業や年金生活者、パート・アルバイトなど、健康保険や共済組合に加入していない75歳未満のすべての方が対象となる制度です。[参考5]また医師や建設業など、同じ業種で組織される国民健康保険組合もあり、いずれも市区町村が運営しています。[参考6]
国民健康保険には扶養制度はありませんので、第1号被保険者に扶養されている配偶者は、自分で保険料を納める必要があります。[参考7]
なお生活保護を受けている方は、医療費の自己負担がないことから同制度の対象外です。
参考5:厚生労働省「国民健康保険の加入・脱退について」
参考6:厚生労働省「事業概要等」
参考7:日本年金機構「国民年金はどのような人が加入するのですか。」
後期高齢者医療制度
75歳以上、または65歳から74歳で後期高齢者医療広域連合から一定の障がいがあると認定を受けた方が加入できる制度です。[参考8]75歳以上の方の場合、特に手続きをすることなく、自治体から「後期高齢者医療被保険者証」が交付されます。[参考8]
参考8:東京都後期高齢者医療広域連合「対象者」
保険証の種類による違いは?
保険証は、公的医療保険制度を運営している運営主体(保険者)によって、表記や保険料・保障内容に違いがあります。各保険証の違いについて見て行きましょう。
保険証の記号や番号の違い
保険証の券面には自身の氏名や生年月日以外にも多くの情報が記載されています。例えば、保険証には「記号」と「番号」が書かれています。この2つの情報からは保険の種類などがわかります。
「記号」とは事業者整理番号ともいわれ、社会保険の場合は勤務先ごと、国民健康保険の場合は自治体ごとに異なります。また「番号」は、被保険者ごとに割り当てられる番号のことです。なお、扶養家族がいる場合は、その被保険者と同じ番号が割り当てられます。
さらに保険証には8桁、または6桁の「保険者番号」もあります。保険者番号とは保険者に対して割り当てられた番号のことで、保険者番号の左から1桁目と2桁目は加入している公的医療保険制度を表します。
例えば、全国健康保険協会であれば「01」、組合健保であれば「06」となります。なお国民健康保険の場合、この場所は「空欄」であることから、保険者番号が6桁の方は、国民健康保険の被保険者であることが分かります。
保険料や保障の違い
保険証ごとに保険料の計算方法も異なります。例えば社会保険の場合、まず毎年4月~6月の報酬から「標準報酬月額」という金額を算出し、この「標準報酬月額」に対して組合健保の場合は独自で定めた料率、全国健康保険協会であれば都道府県ごとに定められた料率を乗じて計算をします。[参考9]
一方、国民健康保険は世帯単位で計算をするため、被保険者の人数や収入、年齢などをもとに、自治体ごとに定められた料率で計算されます。[参考10]
また保障内容も異なる点があるため注意が必要です。
例えば社会保険の被保険者には、病気やケガで働けなくなったときに支払われる「傷病手当金」や、出産で仕事を休んで給料がもらえないときに支給される「出産手当金」がありますが、国民健康保険にはこれらの手当金はありません。
働き盛りのフリーランスや個人事業主の方は、もしもの病気やケガで長期間働けなくなったときの保障を社会保険加入者より手厚く準備しておく必要があります。
参考9:全国健康保険協会 協会けんぽ「令和4年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(北海道)」
参考10:厚生労働省「保険料指数について」
保険証はマイナンバーカードでも利用できる
令和3年3月から、医療機関や薬局などで保険証の代わりにマイナンバーカードが利用できる「マイナ受付」が可能になりました。
マイナンバーカードのメリット
マイナンバーカードを保険証として利用して、医療機関の受診時にお薬の情報や特定健診の結果の提供に同意すると、これらの情報に基づいた総合的な診断を医師から受けられるうえ、重複する投薬の回避など適切な処方を受けられることがメリットです。
また高額な医療費が必要になった治療でも、限度額以上の支払いが不要になり、一時的に高額な医療費を立て替えたり、限度額適用認定証の書類申請手続きをしたりする必要がありません。さらにマイナポータルから保険医療の記録が確認できるため、領収証の保管・手続きの必要がなく、確定申告の医療費控除の手続きが簡単にできます。
マイナンバーカードのデメリット
現状すべての医療機関でマイナンバーカードが保険証の代わりに利用できるわけではありません。利用前に、厚生労働省のホームページで利用しようとしている医療機関や薬局が「マイナ受付」に対応しているか確認しましょう。
マイナ受付に対応している医療機関や薬局では、オレンジの「マイナ受付」のステッカーやポスターが貼ってあるため、外観でも確認できる場合があります。
保険証を切り替えるタイミングや注意点
社会保険の場合、退職した翌日から保険証が使用できなくなります。[参考11]
そのため、退職後の保障について不安を抱いている方もいるかもしれません。しかし、退職日の前日から2ヵ月以上の被保険者期間があれば、前職の健康保険を最長2年間継続できる「任意継続制度」があります。ただし任意継続は退職日から20日以内に申請が必要です。[参考12]
また社会保険の保険料は勤務先と従業員が保険料を折半して負担していますが、任意継続は全額自己負担となるため、場合によっては国民健康保険のほうが負担が少ないケースもあるため注意が必要です。なお、2022年1月より本人の申し出によって任意継続健康保険の脱退が可能になっています。[参考13]
任意継続をしない場合は、原則、退職日翌日から14日以内に住んでいる市区町村の役所で国民健康保険の加入手続きをする必要があります。遅れても手続きは可能ですが、保険料は退職日の翌日までさかのぼって支払うことになります。[参考14]
退職後すぐに病気やケガになる可能性もあるため、退職後にすぐに就職をしないのであれば、任意継続か国民健康保険加入の手続き、あるいは扶養に入る手続きをすみやかに済ませましょう。
以下、その他の保険証を切り替えるタイミングについても紹介します。
結婚をしたとき
自営業者や自営業の扶養家族で、国民健康保険に加入している方の場合、同じ職場であれば氏名の変更などがあれば役所で手続きを行います。お勤めの配偶者の扶養に入る場合は、配偶者の勤務先で手続きを行います。また、結婚を機に一般企業に勤務する方は、自身の勤務先で健康保険加入の手続きをします。
一方、現在健康保険に加入している方の場合、引き続き健康保険に加入している職場に勤務する場合は、氏名の変更などがあれば現在の勤務先で手続きをします。また一般企業に勤めている配偶者の扶養になるときは、配偶者の勤務先での手続き、配偶者が個人事業主の場合は、役所で手続きが必要です。
離婚をしたとき
配偶者の社会保険に被扶養者として加入していた場合、離婚にともなって切り替えが必要となります。配偶者が働く会社で扶養から外れる手続きをしてもらったあとに「資格喪失証明書」を取得し、ご自身の勤務先に提出して新たに健康保険に加入する手続きをしましょう。
離婚前から会社で働きご自身の名義の健康保険に入っていた場合(扶養に入っていなかった場合)は、もし姓が変わる場合は変更の手続きが必要なこともあるので勤務先の担当部署に確認しましょう。配偶者を扶養に入れていた場合は会社に扶養を外す旨を伝え、資格喪失証明をもらって配偶者に渡します。
また、離婚後にご自身が個人事業主になるときは、役所で手続きが必要です。
就職・転職をしたとき
一般企業に就職する場合は、勤務先で手続きをします。また一般企業から一般企業に転職するときは、新たに就職する勤務先で手続きが必要です。また一般企業から個人事業主になるときは役所で国民健康保険になるための手続きが必要になります。
75歳になったとき
75歳になると後期高齢者医療制度に自動的に加入となります。被扶養者がいる場合は、国民健康保険への加入手続きが必要になるため注意が必要です。
参考11:全国健康保険協会 協会けんぽ「会社を退職するとき」
参考12:全国健康保険協会 協会けんぽ「任意継続の加入条件について」
参考13:全国健康保険協会 協会けんぽ「Q1:資格の喪失について」
参考14:中野区「[加入]会社を退職して14日を過ぎてしまいましたが、国民健康保険に加入できますか?」
まとめ
保険証には「社会保険」「国民健康保険」「後期高齢者医療制度」の3種類があり、各保険制度によって保険料や保障内容などが異なります。将来、大きな病気やケガをしたり、長期の入院で高額な医療費がかかる可能性も考えられるため、備えとして民間の保険への加入を考えたり、見直したりするときに、自分が加入している保険制度やその保障内容を理解しておくことは重要です。
公的保障制度で病気などに備えるのが基本ですが、家族を養ったり長期療養が必要になったりすると、公的保障だけでは足りないかもしれません。もしものときの必要保障を計算し、足りない場合は民間保険でも備えることを考えておきましょう。
※本記事の内容は公開日時点の情報となります。 法令や情報などは更新されていることもありますので、最新情報を確かめていただくようお願いいたします。
※本記事は、フコク生命ホームページ47lifeに掲載されている記事を転載したものです。
【FP紹介文】
金子賢司(かねこ けんじ)
個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務めるファイナンシャルプランナー。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信している。CFP、日本FP協会幹事。