「障害年金について知っておくべきこと~がんになった時にもらえるお金の話~」 セミナーレポート

2024.06.26

2024年4月に、がん経験者専用がん保険を販売するMICIN(マイシン)少額短期保険株式会社がオンラインセミナーを開催。日本医科大学武蔵小杉病院 腫瘍内科 教授の勝俣範之先生をお招きして、がん患者にとっての障害年金をとりまく現状や重要性、申請の手順などについて講演いただきました。後半に行われた、MICIN少額短期保険 代表取締役 笹本とのトークセッションや参加者からの質問コーナーの内容も含め、レポートします。

<スピーカー プロフィール>

勝俣 範之(かつまた のりゆき)先生
1992年より国立がんセンター中央病院内科レジデント。当時は、各科ローテーションの制度はなかったが、自ら内科各科を研修、血液腫瘍、骨髄移植、婦人科化学療法にも従事。1997年国立がんセンター中央病院内科スタッフとなり、JCOG臨床試験に関与するようになる。2004年ハーバード大学生物統計学教室に短期留学、ダナファーバーがん研究所、ECOGデータセンターで研修を受ける。その後、国立がんセンター医長を経て、2011年10月より、日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科教授として赴任。腫瘍内科を立ち上げる。2024年2月、『あなたと家族を守る がんと診断されたら最初に読む本』をKADOKAWAより上梓。

1.進行がんに限らず受給可能性のある障害年金。活用の進まない背景は?

がん治療を行いながら、お金に困ったら受けられる公的制度には、高額療養費制度や介護保険、傷病手当金があり、これらについては通院中の病院や職場からも案内が比較的あります。しかし、「障害年金」については、がん患者が受給できるとあまり知られておらず、相談してもソーシャルワーカーから「がん患者は受給できない」、主治医は「診断書は書けない」、年金事務所では「こんなに元気なのだから、もらえると思わないように」などといわれてしまいがちです。

そもそも障害年金とは、病気などで生活や仕事などが制限されるようになった65歳未満の方に年金を支給する制度で、65歳以上の場合は老齢年金と比べて受給額の高いほうをもらえます。そして、がんの進行により、機能障害、全身衰弱、抗がん剤の副作用による機能障害が生じ、生活や仕事が制限される場合には受給可能。このような状態であれば進行がんに限らず、早期がんでも対象となりますが、申請しないともらえません。

がん患者でも受給できると知っておくことが大事ですが、情報提供元は患者団体やインターネットがほとんどで、主治医や看護師、がん相談支援センターなどからの情報提供があまりなされておらず、これは医療従事者側の課題といえます。実際、医師のなかでは障害年金についての理解があまり進んでなく、指定医師しか診断書を書けない「身体障害者手帳」と混同されることも少なくありません。

また、請求する上でも手続や書類作成が煩雑だったり、初診日や障害認定日といった独特な知識が必要だったり、その証明も困難だったりと、さまざまなハードルがあります。

2.1級認定だと月8万円以上を支給。長期にわたる治療の大きな助けに

そのように申請や認定までが難しいものであっても、がん患者さんに障害年金について知っておいてもらいたいのは、近年、抗がん剤治療がますます高額になっており、経済的に続けられないケースが多数見受けられるからです。

肺がんでいえば、従来の化学療法で使われる抗がん剤のシスプラチン(商品名パラプラチン)は1か月あたり3.8万円ですが、分子標的薬のゲフィチニブ(商品名イレッサ)は20.4万円、アレクチニブ(商品名アレセンサ)は80.5万円です。どちらもステージ4(遠隔転移を持った再発もこれに相当)の方の生存率改善に寄与したお薬です。さらに、ある種のがんに高い効果が期待される免疫チェックポイント阻害薬には、あまりに高額で話題になったニボルマブ(商品名オプジーボ)があり、1か月316.3万円、3割負担としても月100万円ほどもかかってしまう。高額療養費制度を使うと、月8万円になりますが(所得による)、おいそれと一時負担ができる金額とはいえません。

それを何年間も続けねばならない場合もあり、がん治療のために失職や雇用機会・仕事の活動性の減少などの「経済毒性」を招いています。実際に、「預貯金を切り崩した」「レジャー(旅行、外食、映画など)を普段より減らした」「食費や医療費を削った」「自分の仕事を増やした(あるいは家族が余計に働いた)」「処方された薬を量や回数を落として飲んだ」「外来や抗がん剤の回数を減らした」というケースが出てきています(愛知県がんセンター調べ)。

これに対し、障害年金の給付額は、1級だと月額8万円以上が支給されるので大変助けになり、診断から1年6か月までの時点にさかのぼって支払われる場合もあります。ただし申請しないともらえないものですので、ぜひ制度を知っておいてほしいです。

そもそも原資となる年金保険料は、厚生年金では標準報酬月額や標準賞与額に18.3%の料率を掛けた額を労使折半します。月給30万円なら毎月27,450円が給与から天引きされるので、20歳から勤めて30年間ほぼ同じ月給と仮定すると積算で988万円になります。これだけ支払うわけですので、必要なときには活用すべきでしょう。

3.医療従事者だけでなく、制度に詳しい社会保険労務士への相談も視野に入れて

障害年金の納付要件は、「3分の2以上の期間が納付または免除されている」「直近1年間に保険料の未納期間がない」「診断から1年6か月以上経っている」となっています。しかし、3つ目については例外的措置として、最初から進行がんと診断されたなど、症状が固定してこれ以上治療効果が期待できない場合も対象となり得るので、諦めずに相談してほしいです。

相談先としては、診断書を書いてもらうので主治医は必須ではありますが、障害年金について詳しくない場合もありますので、看護師やがん相談支援センター、ソーシャルワーカーなどでもよいでしょう。申請が通りそうか微妙な状況のときにお勧めしたいのは、社会保険労務士(以下、社労士)です。なかでも、がん患者さんの障害年金を専門としている社労士をぜひ探してください。社労士事務所のホームページで専門を確認されるとよいと思います。申請代行までしてくれる場合もありますし、遠方からの依頼でも対応してくれる可能性もあるので、諦めずに探されることをお勧めします。

4.トークセッションおよび質問コーナーのQ&A

――社労士に支払う費用はどのくらいかかるのでしょうか?先生がこれまでに関わったケースで教えてください。

初回相談は無料であることが多いようです。そして、障害年金の申請は成功報酬の場合が多く、受給額の1割程度が相場のようですが、社労士の方に確認してみてください。いずれにしても、受給できた場合のメリットのほうが大きいので、まずは相談することをお勧めします。

――それでは、社労士に相談する場合にはどんな手順で進めるのがよいでしょう。

まず受給資格をチェックします。受給要件というのは細かくて、医療従事者には判断が難しいもの。社労士は、日常生活で困っていること、たとえば文字を書く、箸を握るといった動作ができるかなどを細かく聞いて、「生活に支障がある」という要件に合うかを判断してくれます。それで受給できそうだとなったら、そこで主治医に相談し、診断書を書いてもらうという手順がよいでしょう。

社労士が聞き取った内容を医師に伝えてもらい、それを参考に医師が診断書を作成します。障害年金の様式は3ページもあり記入欄も多いため、社労士の協力が重要。この書き方いかんで受給可否が決まることもあります。

――申請を一度行って、認定が受けられなかったりすると諦めてしまいそうですが、再請求で通る場合もあるのでしょうか。

もちろんあります。がん患者の症状は刻一刻と変わってくるものなので、1か月前よりも重症になって生活に支障が出てくれば、再請求も可能です。

また、最初は自分で申請して通らなかったが、2回目は社労士にお願いしてうまく行った事例もかなりたくさん聞いています。ですから、諦めず何度でもチャレンジしてほしいです。

――障害年金を受給すると、全く働けなくなるのでしょうか。仕事はできる範囲で続けたいので、不安です。

障害の程度によりますが、働きながらでも受給できる場合はあります。「働いているからもらえない」ということはなく、判断のポイントはあくまで「生活に支障があるか」です。

実際に、がんによる内部的障害で本当に身体がだるかったり具合が悪かったりするにもかかわらず、生活のために働いているという人は多くおられます。そういう方も受給対象になる可能性はありますので、ぜひ申請を検討してください。

――参加者さまからのご質問です。乳がんで腋窩リンパ節郭清をしたため、腕が上げられず、荷物が持てません。こうした場合も対象になるでしょうか。

生活の支障の程度によりますので、一度、社労士に相談されるとよいと思います。

――申請から受給までは、どのくらい時間かかりますか。

まず申請するまでに、いろいろな方に相談することになりますし、一番時間がかかるのは、診断書を書いてもらうプロセスです。医師は基本的に多忙なので、これだけで1か月かかることもあるでしょう。診断書のほかにも書類をそろえる必要があるので、さらに何か月かかかったりします。そのうえ、申請後の審査にも時間がかかりますので、早めに相談・申請することをお勧めします。

※掲載された情報は、公開当時の知見によるもので、現状と異なる場合があります。障害年金に関する最新の情報は、行政機関やご自身が通われている病院に確認することをお勧めします。

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