がんで仕事を辞める前に確認すること|社会保険・傷病手当金・失業給付のポイント

2026.08.14

がんで仕事を辞める前に確認すること|社会保険・傷病手当金・失業給付のポイント

がんの治療やその副作用、体調の変化をきっかけに退職を考えることもあるでしょう。

しかし、その時の勢いで退職してしまうと、あとで思いがけない負担が生じることがあります。

ここでは、退職をする前に確認しておきたい5つのポイントを整理してみましょう。 少しの準備で、退職後の暮らしがぐっと安心になります

確認すべきこと1:社会保険の切り替え

退職すると、まず影響が出るのが健康保険と年金です。

会社員や公務員で働いている間は勤務先の社会保険に加入していますが、退職後については3つの選択肢があります。

①任意継続被保険者制度を利用する

それまでの健康保険を継続して最長2年間利用できます。手続きは退職の翌日から20日以内に行います。

メリットは、高額療養費制度の多数回該当の回数が継続できることが挙げられます。保険によっては、付加給付が受けられる場合もあります。 注意点は、保険料が退職前の約2倍(全額自己負担)になることです。    

※ただし、保険料には上限が設けられているため、現役時代の給与が高かった人は2倍にならないケースもあります。

②国民健康保険に加入する

退職日の翌日以降14日以内に、自治体の窓口で行います。

保険料は前年の収入をもとに計算されるので、①の保険料と比較検討するといいでしょう。自治体によっては保険料の減免制度があります。まずはお住まいの市区町村の窓口に、保険料の試算や相談をするといいでしょう。

高額療養費制度の多数回該当の回数はリセットされます。

③家族の扶養に入る

配偶者や親、子が社会保険に加入している場合、その扶養に入るという選択肢もあります。扶養に入ると保険料は払わなくてよくなります。

収入の条件は、年収130万円未満であることと、扶養者の収入の2分の1未満であること。傷病手当金や雇用保険を受け取っている場合には、日額3,612円未満です。

どれを選ぶかで保険料が異なりますので、退職前にシミュレーションしておきましょう。

また、年金も厚生年金から国民年金へ切り替えが必要です。こちらも忘れずに手続きをしましょう。

ただし、③で配偶者の扶養に入る場合には国民年金の第3号被保険者となり、年金の保険料もかかりません。

確認すべきこと2:傷病手当金の状況

退職する前に、いま受けている、もしくは受けられる傷病手当金があるかどうかを確認しましょう。在職中に傷病手当金を受けている場合、退職後も一定条件を満たせば支給継続が可能です。

条件は以下のとおりです。

条件1:退職日までに健康保険の被保険者期間が1年以上ある

勤務先から保険証を受け取っていて、その期間が1年以上あれば、基本的にはあてはまります。一般的には、勤続1年以上、と考えられます。

条件2:退職日に傷病手当金を受け取っている、もしくは受けられる状態である

 引継ぎなどのため退職日に出勤してしまうと、『就労可能』とみなされ、 退職後に継続給付が受けられなくなります。
    
基本的には退職日以前から連続して仕事を休んでおり、退職日当日も療養のために欠勤している必要があります。

傷病手当金は通算で最大1年6か月受け取れます。 ただし、退職後に受け取っている場合には、いったん仕事に就くことができる状態になると、その後再び仕事ができない状態になっても、傷病手当金は受け取れません。

確認すべきこと3:失業給付の条件

雇用保険の失業給付(いわゆる失業保険)は、働く意思があり、働ける状態にもかかわらず仕事に就くことができない時に受け取れるものです。

つまり、療養中で働ける状態になければ受け取れないのですが、病気が理由の場合には延長ができます。

原則として、失業給付が受け取れるのは、離職した日の翌日から1年間です。

もし、その間に病気のために30日以上働けない場合には、ハローワークに申請をして働けない日数分を延長できる仕組みです。 延長できる期間は、最長で3年間です。本来の受給期間(1年)と合わせると、離職日の翌日から最長4年間、受給のタイミングを後ろ倒しにできます。申請は、代理人や郵送でも可能ですので、体調が思わしくない中でも申請しやすくなっています。

確認すべきこと4:退職金・企業年金の取り扱い

退職金や企業年金は、意外と見落とされがちな部分です。

退職金は、退職理由(病気、定年、自主退職など)によって支給額や手続きの時期が異なる場合があります。

さらに、退職金は一時金で受け取るか、あるいは年金受け取りにするかを選べる場合があります。

受け取り方によって所得税が異なるケースもあるので、税理士やファイナンシャル・プランナーに相談しておくと安心です。

また、企業型確定拠出年金(DC)に加入していて、60歳未満で中途退職した場合には他の年金制度に移換する必要があります。

退職後に就職しないのであれば、個人型確定拠出年金(iDeCo)への移換になります。

移換の手続きをせずに放置していると、自動的に国民年金基金連合会に移され、管理手数料だけ引かれる状態になってしまいます。できるだけ早く手続きしておきたいところです。

確認すべきこと5:生活費の見通しを立てておく

最後に大切なのが、退職後の生活設計です。
医療費、日常生活費、家賃・住宅ローンなど、毎月どのくらいの支出があるのか、ざっくりでも把握しておきましょう。

特に、傷病手当金や失業給付を受け取るまでには時間がかかるため、2~3か月分の生活費を手元に確保しておくと安心です。

民間の保険に加入している場合には、保障内容を今一度確認しておくといいでしょう。

医療保険やがん保険だけではなく、年金保険や生命保険にも医療関連の特約が付いている場合もあります。

また、就業不能保険に入っていたら、そちらも要チェックです。

公的な制度だけではなく、民間の保険もまた、自分から給付金請求をしなければ受け取れません。保障内容がよくわからなかったら、保険会社のカスタマーサポートなどに電話して聞いてもいいですね。

保険証券がすぐに見つからなくても、とりあえず電話してみてもいいかもしれません。

退職は、終わりではなく整える時間

退職というと一区切り、のイメージがありますが、療養中は、生活を整えるための時間と考えることもできます。

焦らず、いま受けている制度やこれから受けられる制度を整理しておきましょう。

自分の状況を紙に書き出したり、信頼できるファイナンシャル・プランナーなどに相談することで、見通しがクリアになります。

退職を決める前の一手間が、あとから大きな安心につながります。

執筆 /松川 紀代(まつかわ きよ)

患者家計アドバイザー®AFP、2級ファイナンシャルプランニング技能士

メディカルFPサービス代表、一般社団法人患者家計サポート協会

2011年に乳がんが見つかり治療。がんの治療とお金に悩んだ経験から、2015年より患者支援を主軸としたファイナンシャル・プランナーとしての活動をスタート。

また、2016年からピアサポーターとしても活動をしている(日本癌治療学会認定がん医療ネットワークシニアナビゲーター)。FPとピアサポーターの視点を生かした患者支援を目指し、執筆、相談を中心に活動。

一般社団法人患者家計サポート協会のWEBサイトはこちら

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